研究課題/領域番号 |
23501259
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
孫 継英 広島大学, 原爆放射線医科学研究所, 講師 (80397926)
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研究分担者 |
田代 聡 広島大学, 原爆放射線医科学研究所, 教授 (20243610)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 染色体転座 / RPA2 / ATM |
研究概要 |
染色体転座による遺伝情報の改変は、がん、白血病や先天異常の発生の根本的な原因となりえる。染色体転座は放射線や化学物質などによるDNA二本鎖切断(DSBs)の誘導とその修復エラーにより形成されると考えられているが、その詳細については未だ不明である。本研究は、抗がん剤エトポシドによる治療関連性白血病に関わる11q23転座をモデルとして、DSBsの修復機構に関連する因子の染色体転座切断点集中領域への集積とその分子機構について検討することにより、染色体転座形成の分子機構を解明に取り込んできた。DNA 損傷シグナル伝達調節因子ATMは様々なタンパク質分子をリン酸化することで、細胞分裂を一時停止し、DSBsを修復する生化学反応を起動させる。我々は、ATMによるRPAのリン酸化がエトポシド処理後のRAD51のBCRへの結合を抑制し、11q23転座形成の阻止に重要な働きをしているのではないかとの仮説を立てた。 平成23年度は、共同研究者からRPA2の発現ベクターが入手し、非リン酸化及びリン酸化模倣変異体RPA2発現ベクターを構築した。これらの発現ベクターを用いてエトポシド処理によるRPA2のリン酸化部位が確認できた。また、野生型及び変異型のRPA2の安定性発現細胞株を確立し、Dual color FISHを用いて解析した結果、リン酸化模倣変異体RPA2の発現したATM欠損細胞では野生型RPA2発現した細胞より11q23の転座が低下していたことがわかった。このことから、ATMによるRPA2のリン酸化が11q23転座の形成抑制に重要であることが示された。現在、Duolink法を用いて、RPA2野生型およびリン酸化変異体とRAD51が相互作用することを確認している。さらに、RPAリン酸化によるRAD51のBCRへの結合制御を検討するため、クロマチン免疫沈降法の条件を検討している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度は、ほぼ予定の通りで研究を進めてきた。非リン酸化及びリン酸化模倣変異体RPA2発現ベクターの構築ができた。これらの発現ベクターを用いてエトポシド処理によるRPA2のリン酸化部位を確認した。一時的な発現ベクターを細胞に導入することがATM- RPA2-RAD51の相互作用の解析及びFISH法の解析には不適合であることがわかってから、野生型及び変異型のRPA2の安定性発現ATM欠損細胞及び正常細胞株を確立し、以上の解析を行った。現在、Duolink法を用いて、RPA野生型およびリン酸化変異体とRAD51が相互作用することを確認している。さらに、RPA2リン酸化によるRAD51のBCRへの結合制御を検討するため、クロマチン免疫沈降法の条件を検討している。
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今後の研究の推進方策 |
平成23年度の実験結果から、ATMによるRPA2のリン酸化が11q23転座の形成抑制に重要であることと我々以前発表していた研究結果を踏まえ、平成24年度はRPA2リン酸化によるRAD51の染色体転座切断点集中領域への結合制御を中心に検討する。具体的に、リン酸化変異体RPA2を安定的に発現している細胞株を用いて、エトポシド処理前後のリン酸化変異体RPA2のBCRへの結合及びRAD51のBCR領域へ集積おけるRPAリン酸化の役割をクロマチン免疫沈降法で検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究では生化学的解析および細胞生物学的手法を用いた研究を主に行うため、H24年度は、高価な抗体、siRNA、ゲノム定量PCRに使用する試薬およびFISH法に使用するプローブなどを購入する予定である。また、研究成果の国内外の学会での発表を予定している。さらに、研究の効率化を進めるために研究補助1名雇用する予定である。
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