研究課題
染色体転座による遺伝情報の改変は、がん、白血病や先天異常の発生の根本的な原因となりえる。染色体転座は放射線や化学物質などによるDNA二本鎖切断(DSBs)の誘導とその修復エラーにより形成されると考えられているが、その詳細については未だ不明である。本研究は、抗がん剤エトポシドによる治療関連性白血病に関わる11q23転座をモデルとして、DSBsの修復機構に関連する因子の染色体転座切断点集中領域への集積とその分子機構について検討することにより、染色体転座形成の分子機構を解明に取り込んできた。我々は、DNA 損傷シグナル伝達調節因子ATMによるRPAのリン酸化がエトポシド処理後のRAD51のBCRへの結合を抑制し、11q23転座形成の阻止に重要な働きをしているのではないかとの仮説を立てた。我々は、平成23年度~24年度は、構築した非リン酸化及びリン酸化模倣変異体RPA2発現ベクターを用いて野生型及び変異型のRPA2の安定性発現細胞株を確立し、11q23の転座頻度をDual color FISHを用いて解析した。さらに、生化学的な解析法を用いてRPAリン酸化がRAD51の細胞核内の分布及び11q23転座切断点集中領域への集積を調節することが明らかになった。平成25年度はRPA2のリン酸化よるRAD51の影響を組換え修復効率解析法を用いて確認した。その結果、RPA2のリン酸化がDNA損傷場所へのRAD51の過剰集積を抑制し正確な組換え修復に関わることが分かった。また、クロマチン免疫沈降法を用いて解析した結果、RPA-RAD51のDNA損傷場所への集積がクロマチン再構成因子INO80の関連が明らかになった。一連の結果から、ATMによるRPA2のリン酸化が11q23転座の形成抑制に重要であることが示された。
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