本研究はアディポサイトカインの一つであるレプチンに注目し、レプチンシグナル系が関与している肥満マウスを用いて炎症関連大腸発がんへのレプチンシグナルの関与を解析し、レプチンシグナル系修飾による大腸発がんの予防や治療の可能性を探ることを目的としている。 平成24年度の研究により、レプチン受容体変異マウス(db/dbマウス)はdb/dbマウスの対照マウスとして頻用されるC57BL/6マウスに比べ大腸がん発生頻度が優位に低下していることが示された。平成25年度は、C57BLKS/Jを遺伝背景にもつdb/dbマウス、ヘテロ接合体マウス(db/+)、野生型マウス(+/+)とC57BL/6Jを遺伝背景にもつC57BL/6マウスにおける炎症関連大腸発がんに対する感受性について解析を行った。C57BLKS/Jを遺伝背景にもつdb/dbマウスではC57BL/6マウスに比べ大腸がん発生頻度が有意に低下しており、また同様の遺伝背景をもつdb/+マウス、+/+マウスでは大腸がんの発生がほとんど認められず、C57BLKS/J遺伝背景マウスは炎症関連大腸発がんに対して低感受性であることが示唆された。さらにC57BLKS/J遺伝背景マウスでは、大腸粘膜におけるiNOS、IL-6などの炎症関連因子の発現が著明に低下しており、大腸粘膜における炎症関連因子の発現低下が炎症関連大腸発がんにおける低感受性に関わっている可能性が示唆された。 高レプチン血症を呈するpolygenicな肥満マウス(KK-Ayマウス)を用いて炎症関連大腸がん発生に対するレプチンアンタゴニストの発がん修飾作用に関する検討を行ったが、レプチンアンタゴニスト1mg/kg投与(ob/obマウスにて発がん抑制効果を認めたレプチン投与量)では発がん修飾作用は認められなかった。
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