研究課題/領域番号 |
23501264
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
安田 純 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), COEフェロー (00281684)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
キーワード | マイクロRNA / 発がん / RNA結合タンパク質 |
研究概要 |
生後6日、30日の正常小脳および、Ptc1ヘテロ接合体マウスで発症した髄芽腫の全RNAを用い、対照を正常成熟小脳組織としてmiRNAのマイクロアレイによる発現プロファイル解析を行った。髄芽腫ではいわゆるMYCがん遺伝子の下流で、発癌を促進する機能を持つmiR-17-92クラスターに属するmiRNAの高発現を確認した。一方で正常小脳では高発現で、髄芽腫において発現が抑制されているmiRNAも多数同定された。これらの多くは神経系への細胞分化において重要とされるmiRNAであった。これらについてそのmicroprocessingの異常を検討するため、pre-miRNAおよびpri-miRNAの発現量について定量的RT-PCRによる検討を行ったところ、複数のmiRNAが髄芽腫組織で特異的に成熟過程が阻害されている可能性を見出した。さらにmicroprocessingの調節にかかわる因子を同定するためにHeoらの方法に従い、そのうちの一つ(miR-124)のmiRNA前駆体に試験管内で結合するタンパク質を液体クロマトグラフィー・質量分析によって複数同定した(質量分析は北海道大学理学系研究院小布施教室のご協力を頂いた)。そのうちの一つEbp1タンパク質に着目し、同タンパク質が試験管内でmiR-124ヘアピン前駆体に特異的に結合すること、同タンパク質の抑制がmiR-124の発現上昇を誘導すること、同タンパク質がマウス髄芽腫において周囲の正常組織に比して非常に高発現を示していることなどについて確認した。これらの成果について第70回日本癌学会学術総会などにて報告している。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでEbp1に期待されるmiR-124の成熟機構の抑制作用について間接的ながら支持する結果が得られている。miR-124にはがん抑制的な機能があると報告がある一方、Ebp1についても、発がんを促進的に機能するという報告もあり、今後の研究の進展が期待できる。
|
今後の研究の推進方策 |
Ebp1タンパク質に存在するmethionine aminopeptidase 様のドメインは各種の高分子と相互作用する可能性が指摘されており、EGFR以外にもNucleophosminやリボゾーマルRNA存在下でPTBなどのタンパク質と結合することが指摘されている。手足口病ウイルスのIRESの活性化にはEbp1のみならず、PTB(polypyrimidine binding protein)タンパク質が必須であり、Ebp1の機能発現において重要な役割を果たしている可能性がある。今回申請者らの未発表データにおいてもmiR-124ヘアピン前駆体によるタンパク質沈降実験においてNucleophosminがEbp1とともに共沈している。今回F-Ebp1タンパク質をヒト髄芽腫細胞株DAOYにおいて強制発現し、免疫沈降させることでEbp1と相互作用するタンパク質を質量分析によって同定し、機能解析を進める。その際、miR-124ヘアピン前駆体を共発現させるか、試験管内で合成し後から添加することによって、Ebp1との結合タンパク質の変化を認めるか否かも検討する。同定されたタンパク質については細胞内発現cDNAベクターを作成し、miR-124の成熟機構にいかなる影響を与えるか、分子生物学的解析を行う。その際、ヘアピン前駆体、成熟miRNAの検出はノーザンブロットなど、定量性が高く、成熟過程を追跡できる実験技術を用いる。またmiR-124の機能解析系としてmiR-124の機能を反映するレポーター遺伝子や、マイクロアレイなどによる発現プロファイル解析を実施する。
|
次年度の研究費の使用計画 |
主として分子生物学的試薬や細胞生物学的試薬の購入に充て(120万円程度)、一部は旅費や英文校正費用(両方で10万円程度)として使用する。
|