研究課題/領域番号 |
23501266
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
古賀 文隆 東京医科歯科大学, 医学部, 非常勤講師 (10285851)
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キーワード | 転移 / 化学放射線治療抵抗性 / リスク因子 |
研究概要 |
1)膀胱癌細胞の転移における p63 蛋白の役割 これまで、膀胱癌細胞の浸潤において p63 蛋白消失が、浸潤能亢進の原因となることを報告した(Cancer Res 2009)。また、膀胱癌幹細胞が p63 蛋白を欠失していること、膀胱癌幹細胞がシスプラチン抵抗性を示すことから、p63 蛋白消失が治療抵抗性と関連する可能性を報告してきた(Int J Cancer 2012)。昨年度は、p63 蛋白発現消失が遠隔転移能と関連するか否か、p63陽性膀胱癌細胞と、p63欠失膀胱癌細胞とで、癌細胞マウス尾静注モデルにて検証する計画を立てていたが、東京医科歯科大学動物実験施設の改築工事と重なってしまい、計画していた実験を行うことが出来なかった。 2)筋層浸潤性膀胱癌の化学放射線療法治療耐性規定因子の探索 一昨年前、筋層浸潤性膀胱癌患者に対し、膀胱温存を意図して行った化学放射線療法に対する治療抵抗性と、治療前膀胱癌切除組織中の p63 蛋白発現の多寡との関連を調べ、p63 蛋白発現消失と治療抵抗性とに有意な関連が無いという結果を得た。同治療抵抗性に関連するバイオマーカーの探索を行ったところ、erbB2 の過剰発現が化学放射線療法の治療抵抗性および膀胱癌死のリスクと有意に関連することを見いだした。また、化学放射線療法後に、局所コントロールが良好であるにも関わらず遠隔転移を生じる危険因子を探索したところ、化学放射線療法前の膀胱癌切除標本において、①尿路上皮癌以外に腺癌あるいは微小乳頭状癌の成分が混在すること、②リンパ管・血管侵襲があること、③臨床病期T3-4であること、が独立危険因子であることを見いだした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
改修工事により、計画していた p63 蛋白発現欠失と膀胱癌遠隔転移能との関連を検証する動物実験ができなかった点で、本研究課題の達成度はやや遅れていると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
1)マウス肺転移モデルを用いた膀胱癌転移における p63 発現欠失の役割の解析 p63 発現欠失UMUC3膀胱癌細胞のマウス尾静注・肺転移モデルを作成し、p63を強制発現させたUMUC-p63細胞との肺転移発生頻度の相違を調べる。同様の実験を、p63欠失膀胱癌幹細胞を用いても行う予定である。肺転移ヒト膀胱癌モデルの作成が困難である場合は、尾静注で高率に肺転移を来たすメラノーマ細胞株(B16)の親細胞株とp63導入細胞株とで、肺転移能を比較する。転移能に差を認めた場合、転移関連蛋白の発現プロファイルの相違を調べる。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究代表者の所属施設の変更などにより、基金の繰り越しを依頼したため。 研究報告に掛かる費用に充てる予定。
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