研究課題
本研究プロジェクトについて、これまで、膀胱癌細胞においてp63蛋白発現消失が浸潤能亢進の原因となることを報告した(Cancer Res 2009)。また、膀胱癌幹細胞がp63蛋白を欠失していること、膀胱癌幹細胞がシスプラチン耐性を示すことからp63蛋白欠失と膀胱癌治療抵抗性との関連が示唆されることを報告した(Int J Cancer 2012)。昨年度は、筋層浸潤性膀胱癌に対する化学放射線療法による膀胱温存療法の治療抵抗性と治療後の生命予後について、p63を含む複数の癌関連蛋白を候補として、予測バイオマーカーの探索を行った。その結果、癌原蛋白である erbB2 過剰発現が、治療抵抗性と癌死に有意に関連することを報告し、erbB2標的治療併用の有用性が示唆された(Int J Radiat Oncol Biol Phys 2014)。p63蛋白は、即時膀胱全摘除が施行された膀胱癌患者ではその発現低下が予後因子となることを報告したが(Clin Cancer Res 2003)、化学放射線療法施行症例においては治療抵抗性・生命予後ともに有意な関連を示さなかった。同症例コホートにおいて、化学放射線療法開始前の治療後遠隔転移出現の予測因子を探索したところ、1)組織学的に尿路上皮癌以外の腺癌ないし微少乳頭状癌の混在、2)リンパ管・血管侵襲、3)臨床病期T3-4、が独立危険因子として同定された。さらに、これら3因子のうち2つ以上を有す症例では5年遠隔転移出現率は63%と、危険因子1つ以下のグループのそれ(1割)と比較して高く、治療前全身化学療法の対象として考慮すべきと考える(欧州泌尿器科学会2014)。
すべて 2014
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (1件)
Int J Radiat Oncol Biol Phys
巻: 90 ページ: 303-311
10.1016/j.ijrobp.2014.05.043