研究課題/領域番号 |
23501267
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
土生 敏行 京都大学, 放射線生物研究センター, 助教 (70346071)
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キーワード | がん抑制遺伝子 / 遺伝子改変 / SNP / 外的要因ストレス / パピローマウイルス |
研究概要 |
SNP(single nucleotide polymorphism)は疾患への感受性や外的因子への応答に深く関わっている。SNPと外的要因による細胞影響研究の理解にはその実験系の構築が重要であると考えられる。その代表例として申請研究ではp53 SNPに着目した。ヒトp53 にはヒトだけが持つ72 残基SNP も同様にハピローマウイルス(HPV)起因の子宮頸がん発症と関連し、このSNP がp53 標的遺伝子発現誘導能に深く関わっているとされてきた。本申請研究では23年度に相同組換えにより人工的にSNP を導入した細胞を確立し、コドン72のアルギニンを持つ大腸がん由来細胞HCT116細胞ヘテロアリルを持つ細胞及びホモ遺伝子座をもつ細胞に成功した。さらにこれらの細胞のDNA損傷に対する評価を行い、24年度に渡って行ってきた。 これらSNP差だけを持つ細胞の構築は他の遺伝的要因を排除して解析できる大変有用な細胞であると思われる。 さらにHPVに対するp53応答を観察するためにHPV E6を導入したHCT116細胞を樹立し、HPVとp53 コドン72 SNPによる影響を調べるためにE6を恒常的に発現するR72 SNP HCT116細胞とヘテロ遺伝子座でP72 SNPを持つHCT116細胞を取得した。しかしホモ遺伝子座でP72 SNPを持つHCT116細胞においてはE6を恒常的に発現する細胞の取得は困難で、分裂が進むにつれて生存率が低下し実験系として使用できなかった。これら細胞を用いてp53タンパク質の安定性を確認したところ、R72 SNP p53はE6に感受性を示すのに対して、P72はR72混在でも安定化されていることが明らかになった。このことはp53 SNP差異がその感受性の差を生み出していることの証明となる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本申請研究では相同組換え技術を用いたSNP 導入ヒト細胞を用いた新しい試みにより、ヒト大腸がん由来細胞株においてp53 SNP コドン72ArgからProへ変換した細胞を作成することに成功した。この細胞株を用いた外的要因ストレスへの応答変化、HPV E6に対するp53の安定性及び細胞の応答変化等の解析を現在精力的に進めている。 一方パピローマウイルス起因子宮頸がんとp53 解析に適したパピローマウイルス感染ヒト子宮頸部類上皮種由来細胞でのP型ホモ遺伝子座を持つ細胞の作製も現在手掛けているが改変細胞株の取得はできていない。またTALヌクレアーゼを用いた改変技術を使用しても同様の結果となっている。
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今後の研究の推進方策 |
CT116 細胞系列樹立細胞を用いて外的因子(DNA 損傷ストレス、酸化ストレス、その他薬剤ストレス)に対する細胞増殖性の変化、細胞周期変化、感受性変化等の違いを比較検討を引続き行っていく。外的要因に対するp53 標的遺伝子群の発現プロファイルを作成及びパピローマウイルスによるp53 タンパク質の安定化の解析及びそれに伴うp53 標的遺伝子発現誘導の変化の発現プロファイルを早急に終え、本申請研究を遂行したい。また大腸癌由来細胞HCT116細胞の系でパピローマウイルス起因子宮頸がん細胞での実験を置き換えて実験を進め、HPVとp53 SNPに関してその要因を探っていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
申請書通り本年度の研究費はp53 SNPに基づいたPCRアレイ等の発現解析やE6に対するp53感受性とSNPの差異のタンパク質機能解析の消耗物品に使用する予定である。また進捗状況によっては本年度中の論文発表を目指したい。
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