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2013 年度 実施状況報告書

腫瘍細胞の休眠化機構を特徴づけるマイクロRNAの同定と機能解析

研究課題

研究課題/領域番号 23501268
研究機関神戸大学

研究代表者

下野 洋平  神戸大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (90594630)

キーワード乳がん / 休眠がん細胞 / マイクロRNA / 細胞表面タンパク質
研究概要

本研究では、ヒトの乳がん組織をより正確に反映するモデルとしてヒト乳がん異種移植マウスを作成し、その原発巣および転移巣から休眠状態にあるがん細胞を分離し解析することで、がん細胞の休眠に関わる分子機構を明らかにすることを目指している。これらの目的を達成するために、本年度は下記の実験を遂行した。
(1)ヒト乳がん異種移植マウスの樹立:同意の得られた乳がん患者の手術検体を90症例以上収集し、ヒト乳がんにみられる代表的な組織型を反映する一連のヒト乳がん異種移植マウスを作成した。
(2)ヒト乳がん組織のがん細胞の細胞周期の解析:Hoechst 33342やPyronyn Yなどの染色および細胞周期に関わるタンパク質の発現を指標に、ヒト乳がん手術検体およびヒト乳がん異種移植マウスの原発巣および肺転移巣のがん細胞の細胞周期を解析し、その多くが細胞周期の停止したG0期にあることを解明した。さらに、細胞周期の停止と関連があるとされる一次繊毛の有無と細胞周期との関連を解析し、ヒト乳がん組織やヒト乳がん異種移植マウスの原発巣および肺転移巣のがん細胞では、細胞株などと異なり一次繊毛の有無と細胞周期の停止には関連のないことを明らかにした。
(3)ヒト乳がん異種移植マウスの肺転移巣のがん細胞の分離:樹立されたヒト乳がん異種移植マウスの転移巣よりセルソーターを用いてがん細胞を分離し、それらに発現するマイクロRNAを解析した。
(4)がん細胞休眠に関わる細胞表面タンパク質の同定:ヒト乳がん異種移植マウスの原発巣および転移巣のがん細胞に発現する遺伝子を単細胞レベルで解析することにより、がん細胞の細胞周期の制御と密接に関わる細胞表面タンパク質を同定した。さらにその阻害分子を用いて、マウスモデルを活用してがん細胞休眠との関わりを解析した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

神戸大学医学部附属病院の協力により、年間35症例以上のヒト乳がん手術検体を収集し、免疫不全マウスに移植することで、ヒト乳がんにみられる各種の組織型を反映する一連のヒト乳がん異種移植マウスを作成した。また、それらのヒト乳がん異種移植マウスを活用し、セルソーターを用いて原発巣および転移巣からがん細胞を分離し解析することで、がん細胞の多くが細胞周期の停止した休眠状態にあり、それらの細胞周期が一次繊毛の有無とは関連しないことを示した。ヒト乳がん手術検体を用いた解析でも同様の結果を認めたことからも、これらの知見はヒト乳がん異種移植マウスに形成される腫瘍が、よりヒトの乳がんに類似した性質を持つことを明らかにした。さらに、腫瘍組織のがん細胞の休眠状態を特徴づける細胞表面タンパク質の候補を同定し、マウスモデルを用いてがん細胞休眠との関わりを解析した。

今後の研究の推進方策

樹立されたヒト乳がん異種移植マウスを用いて、がん細胞の休眠状態を特徴づける分子機構を解析する。これまでの解析を踏まえ、原発巣および肺転移巣のがん細胞のマイクロRNA発現解析をより高感度の解析系を用いて行うよう計画を変更した。さらに、同定されたマイクロRNAの標的遺伝子についても検討を加える。この計画変更に伴い生じた次年度使用額は、原発巣および肺転移巣の休眠がん細胞のマイクロRNAの解析と、がん細胞の細胞周期制御などに関わるマイクロRNA標的遺伝子の解析に使用する。

次年度の研究費の使用計画

平成25年度にヒト乳がん異種移植マウスの原発巣および転移巣より分離したがん細胞に発現するマイクロRNAの発現プロファイルを行う予定にしていたが、転移巣より得られるがん細胞が想定以上に微量であったため、計画を変更して、共同研究にてより高感度の方法を用いた解析を追加することとしたため。
上述した研究実績を踏まえ、平成26年度はヒト乳がん異種移植マウスの休眠状態がん細胞を特徴づけるマイクロRNAの機能解析をさらに進める。
(1)休眠状態を特徴づけるマイクロRNAの解析:ヒト乳がん異種移植マウスの原発巣および転移巣より分離されたがん細胞に発現するマイクロRNAを、共同研究によりより高感度の方法で解析する。(2)がん細胞の休眠状態と関連するマイクロRNAの機能解析:ルシフェラーゼアッセイ法などを用いて、樹立されたヒト乳がん異種移植マウスの原発巣および転移巣より分離されたがん細胞を特徴づけるマイクロRNAの標的となる細胞周期の制御などに関わる遺伝子の解析を行う。

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2014 2013

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (6件) (うち招待講演 2件)

  • [雑誌論文] Absence of primary cilia in cell cycle-arrested human breast cancer cells.2014

    • 著者名/発表者名
      Nobutani, K.
    • 雑誌名

      Genes Cells

      巻: 19 ページ: 141-152

    • DOI

      10.1111/gtc.12122.

    • 査読あり
  • [学会発表] Regulation of the Wnt signaling pathway by microRNA-142 upregulated in human breast cancer stem cells.2014

    • 著者名/発表者名
      Shimono, Y.
    • 学会等名
      Keystone Symposia: Stem Cells and Cancer
    • 発表場所
      カナダ(バンフ)
    • 年月日
      20140202-20140207
  • [学会発表] Reduction of the sialylation of nectin-like molecule 2 and enhancement of the ErbB2/ErbB3 signaling by microRNA-199a.2013

    • 著者名/発表者名
      Shimono, Y.
    • 学会等名
      第72回日本癌学会学術総会
    • 発表場所
      パシフィコ横浜(横浜)
    • 年月日
      20131003-20131005
  • [学会発表] Nectins, afadin, and nectin-like molecules in human normal mammary and breas t cancer tissues.2013

    • 著者名/発表者名
      Kitayama, M.
    • 学会等名
      第72回日本癌学会学術総会
    • 発表場所
      パシフィコ横浜(横浜)
    • 年月日
      20131003-20131005
  • [学会発表] MicroRNA-203 suppresses the Wnt effector TCF4 and regulates the proliferation of normal and malignant colon cells.2013

    • 著者名/発表者名
      Hisamori, S.
    • 学会等名
      第72回日本癌学会学術総会
    • 発表場所
      パシフィコ横浜(横浜)
    • 年月日
      20131003-20131005
  • [学会発表] がん幹細胞研究:現状と将来展望2013

    • 著者名/発表者名
      下野 洋平
    • 学会等名
      第11回日本臨床腫瘍学会学術集会
    • 発表場所
      東北大学百年記念会館(仙台)
    • 年月日
      20130829-20130831
    • 招待講演
  • [学会発表] 幹細胞異常と内科系疾患、現状と展望: 幹細胞疾患とエピジェネティクス2013

    • 著者名/発表者名
      下野 洋平
    • 学会等名
      第110回日本内科学会講演会
    • 発表場所
      東京国際フォーラム(東京)
    • 年月日
      20130412-20130414
    • 招待講演

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公開日: 2015-05-28  

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