研究課題
本研究は、ヒト乳がん異種移植マウスを用いて原発巣および転移巣のがん細胞の休眠状態の維持に関わる分子機構を解明することを目的としている。これまでに、ヒト乳がん異種移植マウスでは肺に微小な転移巣を認めるものがあること、およびこれらの微小転移がん細胞は細胞周期の停止したG0期にあることを解明してきた。本年度は下記の実験を遂行して、細胞表面タンパク質であるケモカインレセプターCXCR4の発現低下が肺転移巣のヒト乳がん細胞の休眠維持に関わることを解明するとともに、肺転移がん幹細胞の休眠を特徴づける一連のマイクロRNAを同定して、がん細胞の休眠状態の維持に関わる分子機構を明らかにした。1.ヒト乳がん異種移植マウスの肺転移巣の解析:ヒト乳がん異種移植マウスの原発巣および肺転移巣のがん細胞の遺伝子発現を単細胞レベルで網羅的に解析した。細胞周期の進行に関わるMKI67遺伝子の発現低下とCXCR4の発現低下に単細胞レベルで強い相関を認めること、およびCXCR4の阻害剤により休眠状態がさらに誘導されることを解明した。2.原発巣および転移巣の休眠がん細胞に特徴的なマイクロRNAの解析:ヒト乳がん異種移植マウスの原発巣および肺転移巣からがん幹細胞および非腫瘍原性がん細胞を単離し、定量的PCR法にてマイクロRNA発現を網羅的に解析した。原発巣と肺転移巣のがん幹細胞で著しく発現の異なる一連のマイクロRNAを同定するとともに、これらのマイクロRNAの発現制御に関わる機構や、細胞周期制御に関わる標的遺伝子候補の解析をした。3.マウス移植モデルを用いた休眠関連マイクロRNAの機能解析:レンチウイルスを用いて、同定された一連のマイクロRNAを発現するヒト乳がん幹細胞を作製した。これらのがん幹細胞をマウスに移植して、マイクロRNAが肺転移巣のがん細胞の休眠維持におよぼす影響の解析をすすめている。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 謝辞記載あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (8件) (うち招待講演 3件)
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