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2011 年度 実施状況報告書

ヘッジホッグシグナル伝達異常により発症する腫瘍の腫瘍化機序の解析

研究課題

研究課題/領域番号 23501269
研究機関北里大学

研究代表者

宮下 俊之  北里大学, 医学部, 教授 (60174182)

研究期間 (年度) 2011-04-28 – 2014-03-31
キーワード母斑基底細胞癌症候群 / PTCH1 / 癌抑制遺伝子 / 歯原性腫瘍
研究概要

歯原性腫瘍(KCOT)を発症したKimonisの診断基準を満たす母斑基底細胞癌症候群(NBCCS)患者7例の末梢血よりDNA、RNAを、腫瘍組織よりDNAを抽出し、PCR-シークエンス法でPTCH1遺伝子の変異の有無を解析した。全症例の末梢血からPTCH1遺伝子に配偶子変異が見いだされた。内訳は4例がフレームシフト変異、2例がミスセンス変異、1例がスプライス変異であった。KCOTの2検体から上記配偶子変異に加えて体細胞変異が見いだされた。体細胞変異は全てフレームシフト変異であった。検出された体細胞変異のうち1つは配偶子変異と体細胞変異は同一アレルに存在したため、体細胞変異が腫瘍化に関わっている可能性は否定された。もう一つの体細胞変異は配偶子変異と離れた位置にあったため、アレルの同異は不明であった。体細胞変異が見出されなかった7検体について、PTCH1遺伝子プロモーター領域にあるCpGアイランドのメチル化によりエピジェネティックな機構によってPTCH1が不活化されていないかを解析した。PTCH1には選択的に用いられる複数の第1エキソンがあるため、可能な限り複数のCpGアイランドについて解析したがいずれも陰性であった。以上の点より、今年度解析した限りでは、NBCCSに高頻度に発症するKCOTがKnudsonの提唱した古典的なtwo-hit theoryで腫瘍化していると証明された症例は見出されなかった。同様の研究は中国人で行われた1報があるのみで重要かつ意義深いものである。しかし中国人の結果は我々のものとは異なるものであり、その原因については更なる解析と症例の蓄積が必要であると考えられた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

当初23年度に計画した解析は全て達成できた。加えてPTCH1遺伝子のプロモーターのメチル化についても解析が進んでいるため、当初の計画以上に進展していると判断した。

今後の研究の推進方策

PTCH1遺伝子の一部、あるいは全体が大きく欠損していた場合、PCR-シークエンス法ではもう片方の正常アレルが増幅され、変異なしという誤った結論に至っている場合がある。この大きな欠失を検出する目的で、MLPA法あるいはマイクロアレイ法を用いる。PTCH1遺伝子にセカンド・ヒットはなくても、他の遺伝子の体細胞変異がヘッジホッグシグナル伝達の更なる活性化を引き起こすことで、腫瘍化につながる可能性もある。この可能性を探る目的で、上記で所見が得られない場合、Smoothened(SMO)、Suppressor of fused(SUFU)などのヘッジホッグシグナル伝達関連遺伝子の変異を解析する。更に今後とも新たな症例が集積すれば最初から解析することでより信頼性の高いデータが生まれると考えられる。

次年度の研究費の使用計画

上記の方策のうち、PTCH1及びその周辺領域のゲノムコピー数の解析を目的とするマイクロアレイ法は高額の研究費を必要とするためH23年度残金(繰越金)を使用する予定である。

  • 研究成果

    (11件)

すべて 2012 2011 その他

すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (6件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] ヘッジホッグシグナル伝達と脳腫瘍2012

    • 著者名/発表者名
      塩浜直、内川英紀、水落弘美、宮下俊之、藤井克則
    • 雑誌名

      脳神経外科速報

      巻: 22 ページ: 66-73

    • DOI

      10.1002/ajmg.a.34421

  • [雑誌論文] Nationwide survey of nevoid basal cell carcinoma syndrome in Japan revealing the low frequency of basal cell carcinoma2012

    • 著者名/発表者名
      Endo, M., Fujii, K., Sugita, K., Saito, K., Kohno, Y., and Miyashita, T.
    • 雑誌名

      American Journal of Medical Genetics A

      巻: 158A ページ: 351-357

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Entire PTCH1 deletion is a common event in point mutation-negative cases with nevoid basal cell carcinoma syndrome in Japan2011

    • 著者名/発表者名
      Nagao, K., Fujii, K., Saito, K., Sugita, K., Endo, M., Motojima, T., Hatsuse, H. and Miyashita, T.
    • 雑誌名

      Clinical Genetics

      巻: 79 ページ: 196-198

    • DOI

      10.1111/j.1399-0004.2010.01527.x

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 見逃してはいけない家族性腫瘍:本邦における母斑基底細胞癌症候群の遺伝子変異と臨床的特徴2011

    • 著者名/発表者名
      宮下俊之、桐生麻衣子、齋藤加代子、杉田克生、遠藤真美子、藤井克則
    • 雑誌名

      家族性腫瘍

      巻: 11 ページ: 14-18

  • [学会発表] Gorlin症候群の遺伝子解析2012

    • 著者名/発表者名
      宮下俊之
    • 学会等名
      厚生労働科学研究費補助金 難治性疾患克服研究事業(招待講演)
    • 発表場所
      神戸
    • 年月日
      2012.1.21
  • [学会発表] 日本における母斑性基底細胞癌症候群における基底細胞癌発症率2011

    • 著者名/発表者名
      藤井克則、宮下俊之
    • 学会等名
      第70回日本癌学会学術総会
    • 発表場所
      名古屋
    • 年月日
      20111003-05
  • [学会発表] 母斑基底細胞癌症候群に発症した歯原性腫瘍の遺伝子解析2011

    • 著者名/発表者名
      宮下俊之、桐生麻衣子、佐々木亮、齋藤加代子、藤井克則
    • 学会等名
      家族性腫瘍学会
    • 発表場所
      京都
    • 年月日
      2011.6.16-19
  • [学会発表] 母斑基底細胞癌症候群に発症した角化嚢胞性歯原性腫瘍の発症機序の解析2011

    • 著者名/発表者名
      鈴木麻衣子、長尾和右、高山吉永、亀山孝三、藤井克則、宮下俊之
    • 学会等名
      第34回日本分子生物学会年会
    • 発表場所
      横浜
    • 年月日
      2011.12-13-16
  • [学会発表] 母斑基底細胞癌症候群の分子遺伝学2011

    • 著者名/発表者名
      宮下俊之
    • 学会等名
      第56回日本人類遺伝学会(招待講演)
    • 発表場所
      千葉
    • 年月日
      2011.11-9-12
  • [学会発表] 母斑基底細胞癌症候群に発症する角化嚢胞性歯原性腫瘍の腫瘍化機序の解析2011

    • 著者名/発表者名
      鈴木麻衣子、長尾和右、高山吉永、藤井克則、宮下俊之
    • 学会等名
      第70回日本癌学会学術総会
    • 発表場所
      名古屋
    • 年月日
      2011.10-3-5
  • [備考]

    • URL

      http://www.med.kitasato-u.ac.jp/~molgen/index.html

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公開日: 2013-07-10  

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