研究課題
歯原性腫瘍(KCOT)を発症したKimonisの診断基準を満たす母斑基底細胞癌症候群(NBCCS)患者7例の末梢血よりDNA、RNAを、腫瘍組織よりDNAを抽出し、PCR-シークエンス法でPTCH1遺伝子の変異の有無を解析した。全症例の末梢血からPTCH1遺伝子に配偶子変異が見いだされた。内訳は4例がフレームシフト変異、2例がミスセンス変異、1例がスプライス変異であった。KCOTの2検体から上記配偶子変異に加えて体細胞変異が見いだされた。体細胞変異は全てフレームシフト変異であった。検出された体細胞変異のうち1つは配偶子変異と体細胞変異は同一アレルに存在したため、体細胞変異が腫瘍化に関わっている可能性は否定された。もう一つの体細胞変異は配偶子変異と離れた位置にあったため、アレルの同異は不明であった。体細胞変異が見出されなかった7検体について、PTCH1遺伝子プロモーター領域にあるCpGアイランドのメチル化によりエピジェネティックな機構によってPTCH1が不活化されていないかを解析した。PTCH1には選択的に用いられる複数の第1エキソンがあるため、可能な限り複数のCpGアイランドについて解析したがいずれも陰性であった。以上の点より、今年度解析した限りでは、NBCCSに高頻度に発症するKCOTがKnudsonの提唱した古典的なtwo-hit theoryで腫瘍化していると証明された症例は見出されなかった。同様の研究は中国人で行われた1報があるのみで重要かつ意義深いものである。しかし中国人の結果は我々のものとは異なるものであり、その原因については更なる解析と症例の蓄積が必要であると考えられた。
1: 当初の計画以上に進展している
当初23年度に計画した解析は全て達成できた。加えてPTCH1遺伝子のプロモーターのメチル化についても解析が進んでいるため、当初の計画以上に進展していると判断した。
PTCH1遺伝子の一部、あるいは全体が大きく欠損していた場合、PCR-シークエンス法ではもう片方の正常アレルが増幅され、変異なしという誤った結論に至っている場合がある。この大きな欠失を検出する目的で、MLPA法あるいはマイクロアレイ法を用いる。PTCH1遺伝子にセカンド・ヒットはなくても、他の遺伝子の体細胞変異がヘッジホッグシグナル伝達の更なる活性化を引き起こすことで、腫瘍化につながる可能性もある。この可能性を探る目的で、上記で所見が得られない場合、Smoothened(SMO)、Suppressor of fused(SUFU)などのヘッジホッグシグナル伝達関連遺伝子の変異を解析する。更に今後とも新たな症例が集積すれば最初から解析することでより信頼性の高いデータが生まれると考えられる。
上記の方策のうち、PTCH1及びその周辺領域のゲノムコピー数の解析を目的とするマイクロアレイ法は高額の研究費を必要とするためH23年度残金(繰越金)を使用する予定である。
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