研究課題
歯原性腫瘍(KCOT)を発症したKimonisの診断基準を満たす母斑基底細胞癌症候群(NBCCS)患者8例の末梢血よりDNA、RNAを、腫瘍組織よりDNAを抽出し、PCR-シークエンス法でPTCH1遺伝子の変異の有無を解析した。全症例の末梢血からPTCH1遺伝子に配偶子変異が見いだされた。内訳は5例がフレームシフト変異、2例がミスセンス変異、1例がスプライス変異であった。KCOTの2検体から上記配偶子変異に加えて体細胞変異が見いだされた。体細胞変異は全てフレームシフト変異であった。検出された体細胞変異のうち1つは配偶子変異と同一アレルに存在したため、体細胞変異が腫瘍化に関わっている可能性は否定された。もう一つの体細胞変異は配偶子変異と離れた位置にあったため、アレルの同異は不明であった。体細胞変異が見出されなかった7検体について、PTCH1遺伝子プロモーター領域にあるCpGアイランドのメチル化によりエピジェネティックな機構によってPTCH1が不活化されていないかを解析した。PTCH1には選択的に用いられる複数の第1エキソンがあるため、可能な限り複数のCpGアイランドについて解析したがいずれも陰性であった。以上の点より、今年度解析した限りでは、NBCCSに高頻度に発症するKCOTがKnudsonの提唱した古典的なtwo-hit theoryで腫瘍化していると証明された症例は見出されなかった。同様の研究は中国人で行われた1報があるのみで重要かつ意義深いものである。しかし中国人の結果は我々のものとは異なるものであり、その原因については更なる解析と症例の蓄積が必要であると考えられた。
2: おおむね順調に進展している
KCOTの症例数は1症例増えたのみであったが、それ以外の腫瘍(髄芽腫、髄膜腫、胃癌)の解析が進んでいるため進展は順調であると考えられる。更に重要なことに、KCOTの解析に関する論文を投稿し、現在minor revisionを行っている段階にあるため、今年度中に論文化されることは確実である。
昨年度同様、新たなKCOT症例については最初から解析することでより信頼性の高いデータが生まれると考えられる。昨年度はNBCCS患者に生じた胃癌の解析機会を得た。現在まで胃癌を発症したNBCCSの症例報告は見当たらない。一方で胃癌においてヘッジホッグシグナル伝達が亢進していることを示唆する研究が複数あり、上記症例の解析は極めて興味深い。更に変異が髄芽腫の発症リスクを上げることが明らかになりつつあるSUFUはヘッジホッグシグナル伝達に抑制的にはたらくことがわかっているが、その分子機序が明らかでないため、欠失変異体を用いて機能解析を行う予定である。
研究費の多くは遺伝子解析用の試薬に使用する予定である。SUFUの機能解析には高額な抗体類を必要とするためH24年度残金(繰越金)を使用する予定である。
すべて 2012 その他
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件) 学会発表 (3件) 図書 (2件) 備考 (1件)
Fam. Cancer
巻: 11 ページ: 565-570
Acta Derm. Venereol.
巻: 92 ページ: 619-620
10.2340/00015555-1332
Am. J. Med. Genet. A
巻: 158A ページ: 1724-1728
10.1002/ajmg.a.35412
J. Hum. Genet.
巻: 57 ページ: 422-426
10.1038/jhg.2012.45
PLOS ONE
巻: 7 ページ: e49926
10.1371/journal.pone.0049926
http://www.med.kitasato-u.ac.jp/~molgen/index.html