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2012 年度 実施状況報告書

ヘッジホッグシグナル伝達異常により発症する腫瘍の腫瘍化機序の解析

研究課題

研究課題/領域番号 23501269
研究機関北里大学

研究代表者

宮下 俊之  北里大学, 医学部, 教授 (60174182)

キーワード母斑基底細胞癌症候群 / PTCH1 / 癌抑制遺伝子 / 歯原性腫瘍
研究概要

歯原性腫瘍(KCOT)を発症したKimonisの診断基準を満たす母斑基底細胞癌症候群(NBCCS)患者8例の末梢血よりDNA、RNAを、腫瘍組織よりDNAを抽出し、PCR-シークエンス法でPTCH1遺伝子の変異の有無を解析した。
全症例の末梢血からPTCH1遺伝子に配偶子変異が見いだされた。内訳は5例がフレームシフト変異、2例がミスセンス変異、1例がスプライス変異であった。
KCOTの2検体から上記配偶子変異に加えて体細胞変異が見いだされた。体細胞変異は全てフレームシフト変異であった。検出された体細胞変異のうち1つは配偶子変異と同一アレルに存在したため、体細胞変異が腫瘍化に関わっている可能性は否定された。もう一つの体細胞変異は配偶子変異と離れた位置にあったため、アレルの同異は不明であった。
体細胞変異が見出されなかった7検体について、PTCH1遺伝子プロモーター領域にあるCpGアイランドのメチル化によりエピジェネティックな機構によってPTCH1が不活化されていないかを解析した。PTCH1には選択的に用いられる複数の第1エキソンがあるため、可能な限り複数のCpGアイランドについて解析したがいずれも陰性であった。以上の点より、今年度解析した限りでは、NBCCSに高頻度に発症するKCOTがKnudsonの提唱した古典的なtwo-hit theoryで腫瘍化していると証明された症例は見出されなかった。
同様の研究は中国人で行われた1報があるのみで重要かつ意義深いものである。しかし中国人の結果は我々のものとは異なるものであり、その原因については更なる解析と症例の蓄積が必要であると考えられた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

KCOTの症例数は1症例増えたのみであったが、それ以外の腫瘍(髄芽腫、髄膜腫、胃癌)の解析が進んでいるため進展は順調であると考えられる。
更に重要なことに、KCOTの解析に関する論文を投稿し、現在minor revisionを行っている段階にあるため、今年度中に論文化されることは確実である。

今後の研究の推進方策

昨年度同様、新たなKCOT症例については最初から解析することでより信頼性の高いデータが生まれると考えられる。
昨年度はNBCCS患者に生じた胃癌の解析機会を得た。現在まで胃癌を発症したNBCCSの症例報告は見当たらない。一方で胃癌においてヘッジホッグシグナル伝達が亢進していることを示唆する研究が複数あり、上記症例の解析は極めて興味深い。
更に変異が髄芽腫の発症リスクを上げることが明らかになりつつあるSUFUはヘッジホッグシグナル伝達に抑制的にはたらくことがわかっているが、その分子機序が明らかでないため、欠失変異体を用いて機能解析を行う予定である。

次年度の研究費の使用計画

研究費の多くは遺伝子解析用の試薬に使用する予定である。
SUFUの機能解析には高額な抗体類を必要とするためH24年度残金(繰越金)を使用する予定である。

  • 研究成果

    (11件)

すべて 2012 その他

すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件) 学会発表 (3件) 図書 (2件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Two cases of nevoid basal cell carcinoma syndrome associated with meningioma caused by a PTCH1 or SUFU germline mutation2012

    • 著者名/発表者名
      Kijima C., Miyashita T., Suzuki M., Oka H., and Fujii K
    • 雑誌名

      Fam. Cancer

      巻: 11 ページ: 565-570

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Splicing aberration in nevoid basal cell nevus syndrome2012

    • 著者名/発表者名
      Ishitsuka, Y., Furuta, J., Miyashita, T.
    • 雑誌名

      Acta Derm. Venereol.

      巻: 92 ページ: 619-620

    • DOI

      10.2340/00015555-1332

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Heterozygous Tandem Duplication Within the PTCH1 Gene Results in Nevoid Basal Cell Carcinoma Syndrome2012

    • 著者名/発表者名
      Kosaki, R., Nagao, K., Kameyama, K., Suzuki, M., Fujii, K., and Miyashita T.
    • 雑誌名

      Am. J. Med. Genet. A

      巻: 158A ページ: 1724-1728

    • DOI

      10.1002/ajmg.a.35412

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Selective haploinsufficiency of longer isoforms of PTCH1 protein can cause nevoid basal cell carcinoma syndrome2012

    • 著者名/発表者名
      Suzuki, M., Hatsuse, H., Nagao, K., Takayama, Y., Kameyama, K., Kabasawa, Y., Omura, K., Yoshida, M., Fujii, K., and Miyashita, T.
    • 雑誌名

      J. Hum. Genet.

      巻: 57 ページ: 422-426

    • DOI

      10.1038/jhg.2012.45

    • 査読あり
  • [雑誌論文] RCAN1 is an important mediator of glucocorticoid-induced apoptosis in human leukemic cells2012

    • 著者名/発表者名
      Nagao, K., Iwai Y., and Miyashita T.
    • 雑誌名

      PLOS ONE

      巻: 7 ページ: e49926

    • DOI

      10.1371/journal.pone.0049926

    • 査読あり
  • [学会発表] 母斑基底細胞癌症候群で見出されたスプライシング変異と異常mRNAの分解2012

    • 著者名/発表者名
      志村将人、鈴木麻衣子、初瀬洋美、長尾和右、高山吉永、亀山孝三、藤井克則、宮下俊之
    • 学会等名
      第35回日本分子生物学会年会
    • 発表場所
      福岡
    • 年月日
      20121211-20121214
  • [学会発表] PTCH2とSUFU遺伝子に配偶子変異をもつ母斑基底細胞癌症候群の検討2012

    • 著者名/発表者名
      鈴木麻衣子、長尾和右、高山吉永、岡秀宏、藤井克則、宮下俊之
    • 学会等名
      第71回日本癌学会学術総会
    • 発表場所
      札幌
    • 年月日
      20120919-20120921
  • [学会発表] Suppressor of fused (SUFU)遺伝子の配偶子変異は高い髄芽腫の発症リスクをもたらす2012

    • 著者名/発表者名
      鈴木麻衣子、宮下俊之、木島千尋、岡秀宏、藤井清孝
    • 学会等名
      第16回日本家族性腫瘍学会学術集会
    • 発表場所
      大阪
    • 年月日
      20120615-16
  • [図書] 希少疾患/難病 の診断・治療と製品開発2012

    • 著者名/発表者名
      藤井 克則、宮下 俊之
    • 総ページ数
      1270
    • 出版者
      技術情報協会
  • [図書] Human SOS Biological Science2012

    • 著者名/発表者名
      Fujii, K., Suzuki, N., Uchikawa, H., Sugita, K., and Miyashita, T
    • 総ページ数
      121
    • 出版者
      Transworld Research Network
  • [備考] 北里大学分子遺伝

    • URL

      http://www.med.kitasato-u.ac.jp/~molgen/index.html

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公開日: 2014-07-24  

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