研究課題/領域番号 |
23501271
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
田代 文夫 東京理科大学, 基礎工学部, 教授 (70089332)
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研究分担者 |
秋山 弘匡 東京理科大学, 基礎工学部, 助教 (40400254)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | がん抑制遺伝子 / 14-3-3ファミリータンパク質 |
研究概要 |
14-3-3βとその結合因子FBI1/Akirin2複合体は、核内で転写抑制複合体を形成し、MAPキナーゼフォスファターゼであるMKP-1の発現を抑制し、Ras/Raf/ERKシグナル伝達経路を活性化させ、造腫瘍能と転移能を促進することを明らかにしてきた。(1) 14-3-3β・FBI1/Akirin2複合体の標的因子を探索するため、FBI1/Akirin2発現抑制細胞で発現上昇する因子をマイクロアレイ解析で探索し、標的遺伝子の1つとして、B-CAMを単離した。(2) B-CAMが癌の悪性化にどのように働くか解析するため、B-CAM安定発現株を樹立した。B-CAM安定発現株は、足場非依存的増殖や運動能など癌の悪性化に寄与する性質が抑制されていることを明らかにした。さらに、NOD/SCIDマウスへの移植実験により、造腫瘍能の抑制も確認された。これらの結果より、B-CAMは癌抑制タンパク質として機能していることが示唆された。(3) B-CAM遺伝子の転写制御に、14-3-3β・FBI1/Akirin2複合体が影響を及ぼすか検討した。B-CAMプロモーターを取得し、ルシフェラーゼ活性を調べたところ、FBI1/Akirin2の量依存的にB-CAMプロモーター活性の抑制が確認された。さらに、FBI1/Akirin2が、B-CAMプロモーター上に結合することをクロマチン免疫沈降法により明らかにした。 以上の結果より、14-3-3β・FBI1/Akirin2複合体は、癌抑制タンパク質B-CAMの発現を抑制することで、腫瘍形成能と転移能を獲得すること明らかとした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
FBI1/Akirin2の標的遺伝子であるB-CAMの機能解析を通じて、14-3-3β・FBI1/Akirin2複合体による癌転移亢進メカニズムの一端を解明した。平成23年度に実施予定であったセルソーターを用いたSP解析による細胞分取が装置の技術的問題で実行できなかった。
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今後の研究の推進方策 |
癌幹細胞の発生機序に14-3-3β・FBI1/Akirin2複合体が関与するか、癌幹細胞と非癌細胞をSP解析により分取し、EMT誘導実験および実験動物への移植により造腫瘍能を解析する計画であるが、技術的問題によりセルソーターを用いたSP分画の分取に至っていない。細胞分離用磁気ビーズを用いた分取を検討する予定である。 B-CAM以外のFBI1/Akirin2標的遺伝子の機能解析も継続して行う予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度は、細胞培養関係の消耗品、EMTの誘導とその解析に使用するEMT誘導増殖因子、間葉系細胞関連抗体とマトリゲルチャンバーおよび免疫染色、ウェスタンブロットに使用する抗体と試薬購入費が必要となる。癌幹細胞および転移性癌幹細胞の造腫瘍能と転移能を解析するために、実験用動物の購入が必要となる。また、研究成果を癌専門誌への掲載のため、研究成果発表費が必要となる。
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