研究課題/領域番号 |
23501271
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
田代 文夫 東京理科大学, 基礎工学部, 教授 (70089332)
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研究分担者 |
秋山 弘匡 東京理科大学, 基礎工学部, 助教 (40400254)
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キーワード | 14-3-3 / 癌幹細胞 / 上皮間葉転換 |
研究概要 |
14-3-3βとその結合因子FBI1/Akirin2複合体は、核内で転写抑制複合体を形成し、MAPキナーゼフォスファターゼであるMKP-1の発現を抑制し、Ras/Raf/ERKシグナル伝達経路を活性化させ、造腫瘍能と転移能を促進することを明らかにしてきた。平成24年度は、マイクロアレイ解析で同定したFBI1/Akirin2発現抑制細胞株で発現上昇した遺伝子SPARCの機能解析を行った。 (1) SPARCが癌の悪性化にどのように働くか解析するため、ラット肝癌K2細胞を用いSPARC安定発現株と発現抑制株を樹立した。SPARC安定発現株と発現抑制株ともに、足場依存的増殖能はコントロール細胞株と変わらなかった。しかし、足場非依存的増殖能はSPARC安定発現株で有意にコロニー形成が抑制された。この結果より、ラット肝癌でSPARCは癌抑制タンパク質として機能していることが示唆された。 (2) SPARC遺伝子の転写制御に、14-3-3β・FBI1/Akirin2複合体が影響を及ぼすか検討した。SPARCプロモーターを取得し、ルシフェラーゼ活性を調べたところ、FBI1/Akirin2の量依存的にSPARCプロモーター活性の抑制が確認された。さらに、FBI1/Akirin2が、B-CAMプロモーター上に結合することをクロマチン免疫沈降法により明らかにした。 以上の結果より、14-3-3β・FBI1/Akirin2複合体は、癌抑制タンパク質SPARCの発現を抑制することで、腫瘍形成能と転移能を獲得すること明らかとした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
FBI1/Akirin2の標的遺伝子であるSPARCの機能解析を通じて、14-3-3β・FBI1/Akirin2複合体による癌転移亢進メカニズムの一端を解明した。平成23年度は実施予定であったセルソーターを用いたSP解析による細胞分取が装置の技術的問題で実行できなかったが、平成24年度はSP解析の条件検討に成功した。さらには、FBI1発現抑制株を用いEMT関連遺伝子の発現変化も検討し、FBI1はEMT誘導に関与する事が明らかとなり、FBI1/ Akirin2が転移に関与する可能性が示唆された。
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今後の研究の推進方策 |
SP解析の条件検討が整ったので、癌幹細胞の発生機序に14-3-3β・FBI1/Akirin2複合体が関与するか、癌幹細胞と非癌細胞をSP解析により分取し、EMT誘導実験および実験動物への移植により造腫瘍能を解析する。さらには、FBI1発現抑制株でABCトランスポーターの1つであるABCG2の発現抑制が認められたことから、抗癌剤排出に関与することが報告されているABCトランスポーター遺伝子(10種類)の発現を調べ、FBI1が発現制御しているABCトランスポーターを特定する。 また、FBI1はコファクターとして転写制御因子複合体で働いているので、その全容解明のためFBI1に結合する因子の同定を試みたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度は、細胞培養関係の消耗品、EMTの誘導とその解析に使用するEMT誘導増殖因子、間葉系細胞関連抗体とマトリゲルチャンバーおよび免疫染色、ウェスタンブロットに使用する抗体と試薬購入費が必要となる。また、研究成果を癌専門誌への掲載のため、研究成果発表費が必要となる。
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