EZ-TAXIScan装置を用いて悪性中皮腫細胞の遊走を可視化した。現在までに悪性中皮腫細胞の遊走がFetal bovine serum (FBS)刺激により促進することを明らかにしてきた。この遊走はPDGF-Dの活性化に必要なurokinase Plasminogen activator (uPA)の阻害剤であるUrynary trypsin inhibitor (UTI)によって抑制されることからPDGF-Dが遊走に関与している可能性が示唆された。FBS刺激により培地中へのPlatelet derived growth factor-D (PDGF-D)分泌が促進されるが、非悪性中皮腫細胞からのPDGF-D分泌は促進しなかったことから、FBS刺激による遊走にはPDGF-Dが重要であることが示唆された。悪性中皮腫細胞にFBS刺激を行うと培地中にPDGF-Dが分泌されたが、非悪性中皮腫細胞ではPDGF-Dの分泌が観察されなかった。そこで外因性のPDGF-Dを悪性中皮腫細胞に処理したところ遊走が促進することが明らかとなった。このとき、PDGF-ββ受容体のsiRNA処理により遊走が抑制されたことから、血清中に含まれている因子によりPDGF-Dが分泌され、オートクライン的作用にて悪性中皮腫細胞の遊走を促進していることを示唆している。さらにどのような経路を介して遊走が促進しているのかについて解析を行った。種々の阻害剤を用いた結果、PI3 kinase、PDK1、Akt、Rac1、ROCKを介した経路で遊走が促進していることが明らかとなった。この結果から、血清中に含まれている何らかの因子によりPDGF-Dの分泌が促進されることにより、悪性中皮腫の遊走が加速されていることが明らかとなった。 PDGF-Dの分泌メカニズムを解明することが効果的な治療薬への開発へとつながるものと考えられた。
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