研究課題
ヒストンのアセチル化阻害を介してクロマチン構造変化を抑制する因子JDP2は分化や細胞増殖に対して抑制的に働き、特に老化やストレス応答性の細胞周期停止(senescence)の制御因子でありそれ故に癌抑制因子としても知られるInk4a/Arfのエピジェネティックな転写制御にも関わっている。一方でInk4a/Arfのノックアウトや酸化ストレスフリーな低酸素状態でinduced pluripotent stem cells(iPS)の作成効率が高まる等の報告がある。この点に着目しJDP2非存在下あるいは発現抑制下での遺伝子導入による分化、脱分化への影響を調べた。モデル系として分化系ではアデノウイルスによりGata4,Mef2c及びTbx5を繊維芽細胞に同時発現させて心筋細胞に分化させる直接心筋分化誘導系(iCM)、脱分化系では同様にアデノウイルスを用いてOct4,Sox2,Klf4,c-Mycを同時発現させるiPS系を用いた。その結果JDP2の非存在下ではそれぞれ分化、脱分化効率が上昇する結果が認められ、今後JDP2に対するshRNAを利用して効率化を図るなど工学的な応用が臨まれる。またiCM 系では上記3因子に加えてHand2を共発現させると心筋分化マーカーcTnTとactininの発現が飛躍的に上昇する知見が得られた。今回使用したアデノウイルスは広く研究者間で共有されるべく、バイオリソースセンターに研究成果物として寄託された。
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Int. J. Cancer
巻: 133 ページ: 1479-1488
10.1002/ijc.28132