研究課題
我々はこれまでに卵巣明細胞癌細胞を用いたcDNAマイクロアレイ解析により虚血性環境下、ICAM1遺伝子が劇的に発現誘導を受けることを明らかにしている。この遺伝子はInter Cellular Adhesion Molecule-1 (ICAM-1)をコードしている。昨年度の研究によりICAM-1が虚血環境下アポトーシスを抑制し、卵巣癌細胞の生存を増強させることを明らかにした。また、ICAM-1 shRNAを恒常的に発現させた卵巣癌細胞を用いてゼノグラフト腫瘍増殖実験を行ない、ICAM-1が腫瘍内の強度低酸素領域において発現誘導を受けること、ゼノグラフト卵巣腫瘍の増殖がICAM-1 のノックダウンにより著しく阻害されることを見出した。これらの結果は、腫瘍内においてin vitro実験類似の虚血環境が存在し、その際誘導されたICAM-1が腫瘍の進展に重要な役割を担うことを示唆している。今年度は、ICAM1発現誘導のメカニズムには転写因子Sp1,HIFsに加え、転写因子NFkappaBの活性化が重要な役割を担うことを見出した。さらに虚血性環境において相乗的発現誘導を受ける遺伝子をcDNAマイクロアレイ解析により探索、パスウェイ解析によりNFkappaBの活性化メカニズムについて検討したところ、自己産生性TNFalphaの関与が予測された。実際に虚血性環境においてTNFalphaは強度に発現誘導され、NFkappaBの活性化に関与することが明らかとなった。またmTORもNFkappaBの活性化に関与することを見出した。また、明細胞卵巣癌外科切除切片を用いた免疫染色によりICAM-1が虚血環境と考えられる癌組織のネクローシス領域付近において強度に発現している結果を得た。このことは、低酸素誘導性ICAM-1が卵巣明細胞癌の治療標的となる可能性を示している。
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PLOS ONE
巻: 8 ページ: e80539
10.1371/journal.pone.0080359
Lab Invest.
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10.1038/labinvest.2013.102