研究課題/領域番号 |
23501281
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研究機関 | 愛知県がんセンター(研究所) |
研究代表者 |
長田 啓隆 愛知県がんセンター(研究所), 分子腫瘍学部, 室長 (30204176)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 肺がん / 癌幹細胞 |
研究概要 |
肺癌幹細胞候補としての肺癌Sphere形成細胞の特性を検討した。13個の肺癌細胞株と1個の正常気道上皮由来細胞株でSphere培養を行い、約2/3の細胞株でSphere形成細胞を得た。癌幹細胞マーカーの検討では、一部でCD133発現誘導・ALDH活性亢進がみられた。次に代表的なSphere形成細胞を用いて、免疫不全マウスに移植したところ、Sphere細胞で造腫瘍能の亢進が見られた。これらの結果は、Sphere形成細胞が癌幹細胞様の特性を持ち、同時に細胞株毎の多様性も示唆され、重要な所見である。また、この代表的Sphere形成細胞からRNAを抽出してmicroarray解析による遺伝子発現profileを解析した。その結果Sphere形成細胞ではHedgehog・Wntシグナルの活性化が見られ、癌幹細胞性維持に関わる可能性が示唆された。一方、Sphere形成における肺癌細胞分化系列の関与を検討するために、神経内分泌分化を誘導するASH1遺伝子のTet誘導ベクターを作成して、細胞分化系列の異なる3種(腺癌・扁平上皮癌・大細胞癌)の肺癌細胞に導入した。扁平上皮癌細胞株で、ASH1によりSphere形成の促進が見られ、肺腺癌細胞株でも、Sphere形成の促進が軽度見られた。一方大細胞肺癌細胞株では、ASH1によりSphere形成の抑制が見られた。このような結果は、肺癌幹細胞誘導においてASH1が関わる細胞分化系列の重要性を示唆している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通りに、多数のSphere形成細胞を樹立し、幹細胞マーカー発現・造腫瘍能を解析した。また遺伝子発現profile解析を進めて、癌幹細胞性維持にかかわるシグナルを検討した。また同様に、当初の予定通りにASH1の Tet誘導ベクターを用い、ASH1シグナルとSphere形成能との関連を解析している。
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今後の研究の推進方策 |
Sphere形成細胞間の多様性が多いことが判明し、当該年度では当初予定よりもSphere形成細胞の蓄積を優先したので、当該研究費が生じた。今後の研究で、蓄積したSphere形成細胞を用いて、細胞マーカー・造腫瘍能・遺伝子発現Profile等の解析を進める。癌幹細胞との比較のために、正常気道上皮細胞株BEAS2B由来のSphere形成細胞も探索する。幹細胞維持能におけるmicroRNAやlincRNAの関与も探っていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
肺癌Sphere形成細胞の造腫瘍能検討のために免疫不全マウスを購入して造腫瘍能解析を進める。また、癌幹細胞に関連するマーカーに対する抗体等を必要に応じて、更に購入蓄積し、肺癌Sphere細胞の特性・多様性を検討する。microRNA・lincRNAを含む遺伝子発現Profileの取得のために、同様に必要に応じてmicroarrayやTaqMan probe等を購入していく。癌幹細胞性維持に関わる重要なシグナル分子の探索するために、siRNA・各種阻害剤等の薬剤の購入も考える。
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