研究課題/領域番号 |
23501283
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
地主 将久 北海道大学, 遺伝子病制御研究所, 准教授 (40318085)
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研究分担者 |
吉山 裕規 島根大学, 医学部, 教授 (10253147)
千葉 殖幹 愛知県がんセンター(研究所), その他部局等, その他 (20550023)
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キーワード | 腫瘍免疫 / 抗がん剤耐性 / ミエロイド細胞 / 樹状細胞 / TIM-3 / HMGB1 / 核酸 / エンドゾーム |
研究概要 |
本成果として、抗がん剤耐性に寄与するミエロイド細胞由来因子としてTIM-3を同定した。TIM-3 は、腫瘍組織に限局して発現亢進を認めること、VEGF-AやIL-10など腫瘍微小環境因子がその発現誘導に寄与することも明らかとなった。TIM-3が樹状細胞による自然免疫活性に与える影響を検証したところ、TIM-3陽性細胞はTIM-3欠損細胞と比較して、TLRなどを認識する核酸リガンドを介したIFN-α/β産生能を顕著に抑制することを同定した。その分子機構を詳細に検証したところ、TIM-3による核酸免疫応答の制御はGalectin-9に依拠せず、HMGB-1と結合することでHMGB1-DNA複合体形成阻害に寄与することが判明した。HMGB1-DNA複合体は核酸のエンドゾーム輸送に重要であり、TIM-3と核酸競合によるHMGB1-DNA複合体形成阻害が、自然免疫活性抑制に深く関与することを明らかとした。さらに、CD11c-DTRとTIM-3欠損骨髄細胞移植によるキメラマウスの検証により、樹状細胞上のTIM-3は、DNAワクチンや抗がん剤を介した細胞死に伴い遊離する核酸を介した自然免疫応答を抑制することでその抗腫瘍効果を抑制すること、さらにTIM-3とHMGB1相互作用を標的とした阻害抗体投与により、DNAワクチンや抗がん剤の効果を劇的に改善することを明らかとした。 以上より、腫瘍浸潤樹状細胞に高発現するTIM-3が、核酸リガンドや抗癌剤処理により放出される自己核酸に対する自然免疫応答を顕著に抑制する重要な因子であることを同定した。以上の成果は、腫瘍微小環境による樹状細胞の自然免疫活性制御メカニズムを明らかにしたとともに、将来の抗がん剤、アジュバントの治療効果改善に繋がる重要な成果である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
抗がん剤による治療応答を抑制する免疫学的因子として申請書が以前に同定したMFG-E8の機能解析に限定せず、本研究で実施した網羅的なスクリーニングで新たにTIM-3による自然免疫応答抑制と抗がん剤治療抵抗性の分子連関を新たに明らかにし、世界的に高い評価を得たてきた(Chiba S et al., Nature Immunology, 2012)。さらに他因子を対象に、抗がん剤感受性を制御する新たな免疫学的メカニズムを明らかにしつつある。以上より、当初の計画通りに順調な状況であると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
抗がん剤耐性を誘導する新たな免疫側因子としてTIM-4を同定し、さらに詳細な解析を水王中である。また抗がん剤耐性にマクロファージのオートファジー経路が重要な機能を有することを同定し、その詳細なメカニズムについて解析を行っている、当該研究費は昨年度で終了のため、これらの解析は他研究費により引き続き継続する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年7月、免疫制御標的分子による樹状細胞機能の抑制能の検証の際、当初検証していた因子以外に検証を要する因子を発見したため、その活性評価のため標的因子の機能解析に更なる時間を要した。また、標的因子の遺伝子欠損マウスの開発、入手が平成24年11月に実現し、その検証を行うことが必須となったため、平成25年7月より追加実験を行う必要が生じた。 抗癌剤効果を抑制する免疫制御因子Tの網羅的解析、分析、および同定された標的分子による樹状細胞の活性能の検証、標的分子によるin vivo発癌制御の解析を行い、あらたな候補因子TIM-4について詳細な解析を行った。さらに、ヒト癌(臨床検体)における免疫制御標的分子の解析を行い、現在までに14検体について成果を得ており、さらに多数の検体を対象とした解析を継続中である。
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