研究課題/領域番号 |
23501285
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研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
齊藤 博昭 鳥取大学, 医学部, 講師 (20335532)
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キーワード | 消化器癌 / 免疫治療 / Tリンパ球 / 免疫逃避機構 / PD-1 / Tim-3 / LAG-3 |
研究概要 |
平成23年度に得られた結果から、胃癌患者におけるリンパ球の機能低下にはPD-1およびTim-3発現が密接に関与していることが明らかとなった。そこでPD-1およびTim-3発現をもとにセルソーターにてリンパ球を分離し、それぞれのサブタイプのリンパ球の詳細な機能解析を行った。まず、サイトカイン産生に関してはPD-1およびTim-3共発現リンパ球はその他のリンパ球に比較してIL-2、IFN-γおよびTNF-α産生能は有意に低下していることがCD4およびCD8Tリンパ球において確認された。また、CD8Tリンパ球においてはPD-1およびTim-3共発現リンパ球において、他のリンパ球と比較して細胞障害活性に関係する分子であるグランザイムBやパーフォリン発現が有意に低下していることが確認された。さらに細胞増殖活性に関してもPD-1およびTim-3共発現リンパ球において、他のリンパ球と比較して有意に低下していた。一方NK細胞に関してはPD-1およびTim-3共発現細胞において、K562に対する細胞障害活性が他のNK細胞と比較して有意に低下していることが確認された。また、LAG-3に関しても胃癌患者の末梢血リンパ球で健常成人と比較して上昇しており(症例数の関係で現時点では有意差を得るまでには至っていないが)、PD-1およびTim-3に加えて、LAG-3も胃癌患者における細胞性免疫能低下に関与している可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
PD-1およびTim-3発現をもとにしたリンパ球各サブセットの機能評価を目的としたCTL誘導およびマイクロアレイを用いた各サブセットの網羅的遺伝子解析による遺伝子レベルで検討が準備の遅れにより出来ていないため。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度に予定していたPD-1およびTim-3発現をもとにしたリンパ球各サブセットの機能評価を目的としたCTL誘導およびマイクロアレイを用いた各サブセットの網羅的遺伝子解析による遺伝子レベルで検討を行う予定である。 さらにTim-3, LAG-3, PD-1を阻害してリンパ球の機能回復程度を検討する。検討項目としては①サイトカイン産生能(IFN-γ、IL-2)、②細胞増殖活性(MLRやCSFE)、③CTLへの分化能、④NK活性などを予定している。阻害に関してはこれまでに阻害能を有することが示されている抗体anti-Tim-3 MAb (clone 1G5)やsiRNAを使用することを予定している。さらに研究結果を取りまとめて成果の発表を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
PD-1およびTim-3発現をもとにしたリンパ球各サブセットの機能評価を目的としたCTL誘導およびマイクロアレイを用いた各サブセットの網羅的遺伝子解析による遺伝子レベルの検討をH24年度に行う予定であったが準備の遅れにより施行できなかった。したがって次年度使用額(547,575円)が発生した。この実験は次年度使用額を使用してH25年度に行う予定である。 さらにH25年度に予定していた上記実験を行うために、各種抗体、サイトカイン、プライマー、ELISAキット、各種試薬などを購入する目的に今年度の研究費を使用する予定である。 また、得られた結果を学会発表するための旅費としても使用予定である。
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