研究課題
成人T 細胞白血病・リンパ腫(ATL)はヒトT細胞白血病ウイルス1型(HTLV-I)を原因とする難治性の造血器腫瘍である。近年、HTLV-Iの転写活性化因子Taxを認識する細胞傷害性T細胞(CTL)が、患者体内でのウイルス感染細胞の除去に重要な役割を果たしていることが報告されている。本研究の目的はTax抗原特異的CTLのT細胞受容体(TCR)のレパトア解析を行なうことによって、Tax特異的免疫細胞療法を開発することである。我々はこれまでにHLA-A24を有する4症例のATL患者において、同種造血幹細胞移植後のCTLの検討を行い、移植後にTax特異的CTLが増加することを確認し、single-cell RT-PCR 法でのTCR レパトア解析によって、移植後のTax特異的CTLのTCRレパトアの多様性は制限されていること、移植後に特徴的なアミノ酸配列(“P-D/P-R”)を有するTCRレパトアを持つCTLが増加すること、この配列は全ての患者において、そして一人の患者においては移植前後の両方に認められたこと、このアミノ酸配列を有するCTLは患者HTLV-I感染細胞に対して強力な細胞傷害活性を有することを報告した(Cancer Research 2010;70:6181-6192)。さらに、移植後の時系列に沿って、Tax特異的CTLの細胞表面マーカーを調査することによってCTLの特徴を詳細に解析した。移植後のTax特異的CTLは主に CD45RA-CCR7- effector memory CTLとして存在することが判明した。そしてsingle cellでのレパトア解析の結果、2つのクローンのTax特異的CTLが移植後3年以上長期にわたって存在し続けることが示された(J Clin Immunol. 2012;32:1340-1352)。さらにこれらのCTLは他の患者のHTLV-I感染細胞に対する細胞傷害性も示すことが判明し、細胞療法に用いることができる可能性が高まった(Immunol Lett. 2014;158:120-125)。今後はこれらのCTLのTCR遺伝子全長をクローニングして健常人T細胞に遺伝子導入し、CTLを産生することによって細胞免疫療法を実現することを目指す。
すべて 2014
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件)
Immunol Lett
巻: 158 ページ: 120-125
doi: 10.1007/s10875-012-9729-5.
Bone Marrow Transplant
巻: 49 ページ: 87-94
doi: 10.1038/bmt.2013.122.