研究課題
(1) 免疫原性の高い癌細胞の開発: ヒト膵癌細胞株PANC-1(HLA-A2+, MUC1+)にTGF-βを遺伝子導入したPANC/TGF-βを作製した。元来、癌細胞は低免疫原性であるが、この癌細胞株を低濃度のエタノールで処理することにより、癌細胞はアポトーシスとネクローシスに誘導された。また、低濃度エタノール処理したPANC/TGF-βはMHC class I、HLA-A2、MUC1の発現が維持されていた。その発現レベルはエタノール処理をしていないPANC-1と同レベルであった。さらに、低濃度のエタノール処理したPANC/TGF-βはTGF-β、VEGFやIL-10の産生が著しく抑制されたが、HSP90の産生は増加してた。これらのことは、低濃度のエタノール処理をすることにより、癌細胞の免疫原性が亢進する可能性を示唆している。(2) 活性化樹状細胞の作製: biological response modifiersであるOK-432とPSKを用いて、ヒト樹状細胞(HLA-A2+)を刺激した結果、MHC class II、CD80、 CD86、 CD83、 CCR7、などが高発現していた。さらに、この活性化樹状細胞からはIL-12p70の産生が著しく亢進していた。また、OK-432とPSKはトール様受容体を刺激できることが別々に報告されている。以上より、医薬品であるOK-432とPSKを用いることで、臨床応用可能な活性化樹状細胞を誘導することができた。
2: おおむね順調に進展している
平成23年度は高免疫原性の腫瘍細胞と活性化樹状細胞を作製することが主たる研究目的である。平成23年度には癌細胞を熱処理した研究はできなかったが、エタノール処理条件を詳細に検討し、免疫原性を高めた癌細胞を誘導することができた。 樹状細胞に関しては、BCGやlentinanを用いた研究は実施できなかったが、OK-432とPSKを用いて活性化樹状細胞の誘導に成功した。以上から、おおむね順調に進展していると思われる。
平成23年度で作製した高免疫原性癌細胞と活性化樹状細胞を融合した新規融合細胞ワクチンを作製する。この新規融合細胞ワクチンの機能を評価するために、(1)融合細胞効率、(2)T細胞の刺激能、(3)融合細胞から産生されるサイトカイン、(4)刺激誘導したT細胞から産生されるサイトカインの特徴、(5)MUC1特異的HLA-A2拘束性のCD8+T細胞の誘導能、(6)PANC-1に対する細胞傷害活性、(7)抑制性T細胞誘導能などを検討する。
ほとんどの研究費は実験消耗品として使用する。十分な研究成果が得られれば、学会発表や論文発表などに研究費の一部使う予定である。
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