研究課題/領域番号 |
23501289
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研究機関 | 東京慈恵会医科大学 |
研究代表者 |
小井戸 薫雄 東京慈恵会医科大学, 医学部, 准教授 (70266617)
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研究分担者 |
本間 定 東京慈恵会医科大学, 医学部, 教授 (50192323)
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キーワード | 樹状細胞ワクチン |
研究概要 |
【目的】進行膵癌に対し、従来の治療概念の限界を打破する目的で、「免疫抑制性サイトカインの産生を制御した癌細胞」と「優れた抗原提示能を有する樹状細胞」を2種類の細胞を化学的に融合した新規細胞ワクチンを開発する。 (1)安全かつ免疫原性の高いがん細胞を作製する。(2)樹状細胞における多種のToll like receptor(TLR)を刺激した「優れた抗原提示能を有する樹状細胞」を作製する。(3)上記の2種類の細胞を融合した新規融合細胞ワクチンを作製する。(4)免疫療法と化学療法の治療相乗効果の機序を解明する。 【結果】(1) 膵癌細胞株を一定の条件下でエタノール処理することにより、「免疫抑制性サイトカインの産生を制御した癌細胞」を作製した。(2)ヒトの樹状細胞におけるTLR2とTLR4を同時に刺激することにより、「優れた抗原提示能を有する樹状細胞」を作製することが可能であった。(3)がん細胞と樹状細胞を融合した融合細胞ワクチンは自己の樹状細胞のmajor histocompatibility complex (MHC) class I と class IIに直接ペプチドを提示し、自己のCD4とCD8T細胞を同時に刺激することが可能であることを、電子顕微鏡を用いて直接解明した。(4)がん細胞と上記のすぐれた樹状細胞を融合した融合細胞ワクチンは効率よく細胞障害性T細胞を誘導できた。(5)免疫療法と化学療法の併用療法の相乗効果機序の一つとして、ある種の抗がん剤(サイクロフォスファマイドやゲムシタビン)にて、抑制性T細胞の誘導を抑制することをin vitroで示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1)ヒトの樹状細胞におけるTLR2とTLR4を同時に刺激することにより、「優れた抗原提示能を有する樹状細胞」を作製することに成功した。 (2)がん細胞と上記のすぐれた樹状細胞を融合した融合細胞ワクチンは効率よく細胞障害性T細胞を誘導できた。 以上の主目的が達成できた。
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今後の研究の推進方策 |
「免疫抑制性サイトカインの産生を制御した癌細胞」と「優れた抗原提示能を有する樹状細胞」を2種類の細胞を化学的に融合した「新規細胞ワクチン」を作製し、その機能を解析する。 以上の目的のため、今年度は、「免疫抑制性サイトカインの産生を制御した癌細胞」の作製を試みる。
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次年度の研究費の使用計画 |
「免疫抑制性サイトカインの産生を制御した癌細胞」を作製するため、 (1)がん細胞をエタノール処理する (2)PSK (TLR2 agonist)、OK-432 (TLR4 agonist), imiquimod (TLR7 agonist)などで処理する 以上の処理により免疫原性が高いがん細胞がえられるか検討する。 最終的に、「免疫抑制性サイトカインの産生を制御した癌細胞」と「優れた抗原提示能を有する樹状細胞」を2種類の細胞を化学的に融合した「新規細胞ワクチン」を作製し、サイトカイン(IFN-γ)産生やCTLアッセイ、テトラーマアッセイなどにて、その機能を解析する。
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