(1)腫瘍細胞をエタノール処理することにより、腫瘍細胞からTGF-betaなどの免疫抑制性サイトカインの低下、熱ショックタンパクの増加、calreticulinの増加が認められた。すなわち、ある条件で腫瘍細胞をエタノール処理することにより、腫瘍細胞の免疫原性が向上した。しかしながら、腫瘍細胞のトール様受容体を刺激しても、大きな変化は認められなかった。また、腫瘍細胞をゲムシタビン(抗癌剤)やIFN-gammaで培養することにより、PD-L1の発現が増加した。 (2)樹状細胞のトール様受容体を刺激することにより、CD80、 CD86、MHC class IIの発現増加とIL-12p70の産生増加を認め、成熟樹状細胞の作製に成功した。 (3)エタノール処理した腫瘍細胞とトール様受容体を刺激した成熟樹状細胞を細胞融合することにより作製した融合細胞ワクチンは腫瘍抗原特異的な細胞障害性T細胞を誘導することが可能であった。 (4)ヒトプラズマ系樹状細胞のトール様受容体を刺激し、腫瘍細胞を細胞融合することにより作製した融合細胞ワクチンは、自己のリンパ球を刺激し、腫瘍抗原特異的な細胞障害性T細胞を誘導できた。 (5)WT1を標的とした免疫療法(WT1ペプチドワクチンまたはWT1ペプチドパルス樹状細胞療法)と化学療法を併用した臨床試験の結果、WT1特異的な免疫反応を誘導できた膵癌患者は、全生存期間が延長した。
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