研究課題/領域番号 |
23501291
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
和田 はるか 北海道大学, 遺伝子病制御研究所, 講師 (70392181)
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キーワード | 細胞リプログラミング / iPS細胞 / DLI療法 / 腫瘍免疫療法 / 分化誘導 |
研究概要 |
申請者は、白血病治療後、再発抑止の目的で行われる腫瘍免疫療法(DLI療法)に近年開発された細胞リプログラミングの手法を取り入れた新しい腫瘍免疫療法の開発を試みている。具体的には、白血病の根治目的で行われる骨髄移植のドナーから採取した細胞をiPS細胞化し、そこからT系列細胞を分化誘導してDLI療法に用いることで、半永久的に継続的にDLI治療を可能にしようとするものである。昨年度までの取り組みで、骨髄ドナー由来iPS細胞から分化誘導したT系列細胞をDLI療法用の細胞として白血病治療後再発マウスモデルに投与したところ、治療回数に応じてマウスの生存期間を延長させることに成功した。本年度は、投与されたiPS細胞由来T系列細胞が抗腫瘍効果を発揮する要因について探索を行った。 1.iPS細胞由来T細胞のアロ細胞反応性について DLI療法が奏効する機序としては、移入した細胞によるアロ反応性によるものが考えられている。そこで、白血病マウスモデルにおいてDLI療法に用いた細胞、つまりiPS細胞から分化誘導したT系列細胞のアロ細胞反応性について、アロ細胞混合試験において細胞増殖活性にて評価した。iPS由来T系列細胞は、予想されるとおり、Syngenic細胞に増殖反応を示さなかった。一方で、アロ細胞に対しても増殖反応を示さなかった。よって、本研究においてマウスモデルに適用したDLI療法の奏効機序については、移入細胞のアロ反応性によるものではない可能性が示唆された。 2.DLI治療を受けたマウス体内における免疫細胞組成の変化について DLI療法施行後のマウス体内における免疫細胞組成の変化について解析した。DLI施行後マウス末梢血において、レシピエントCD8+細胞傷害性T細胞比率が有意に増加していることが確認された。またNK細胞比率も増加傾向にあり、DLI療法の奏効に寄与している可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度までの取り組みで、骨髄ドナー由来iPS細胞から分化誘導したT系列細胞をDLI療法用の細胞として白血病治療後再発マウスモデルに投与することにより、治療回数に応じてマウスの生存期間を延長させることに成功している。 本年度は、投与されたiPS細胞由来T系列細胞が抗腫瘍効果を発揮する要因について探索を行い、予想された効果とは異なったものの、DLI治療を施行したマウスにて対照マウスでは見られない免疫細胞の組成変化を認めており、研究はおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
投与されたiPS細胞由来T系列細胞が抗腫瘍効果を発揮する要因について更に探索を続ける。 DLI治療を施行したマウスにて対照マウスでは見られない免疫細胞の組成変化を確かに認めているが、その組成の変化が、真にマウスの生存期間を延長する効果を発揮しているのか否か、更に検討してゆく。 またDLI治療による奏効機序について、別の要因がある可能性も考え更に検討し、その結果をもとに、より効果のあるDLI治療の開発を目指す。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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