研究課題
個々の患者の免疫記憶に対応したペプチドを用いるテーラーメイドペプチドワクチン療法では、個々の患者の多様性に対応するために多くの種類のワクチン候補ペプチドを事前に用意しなければならず、また、HLA検査や免疫検査などの特殊検査が必要であり、一般医療へ移行するには多くの問題がある。そこで、本研究ではテーラーメイドワクチンと同等以上の臨床効果を有し、かつ事前の特殊検査を必要としない非テーラーメイド型のマルチペプチド混合ワクチンの開発を行う。本年度は以下の研究を実施した。1.混合ワクチンの製剤学的検討:前年度までの研究で絞り込んだペプチド20種(KRM-20)の各成分ペプチドについてHPLCでの定量系を確立し、それらを用いて安定性の検討を行った。その結果、-20℃冷凍保存下で12か月間安定であることが示された。2.ラットを用いた毒性・安全性の検討:KRM-20の毒性について、ラットを用いて検討した。ラットに4週間並びに26週間、ヒトで投与予定の100倍量のKRM-20を反復投与した実験結果についてのレビューを行った。その結果、注射部位の軽度の炎症以外には毒性所見は認められなかった。以上より、ヒトでの臨床試験を開始することの妥当性が担保された。3.臨床試験による安全性の検討:KRM-20については去勢抵抗性前立腺がん患者17例を対象とした第I相試験を医師主導治験として実施した。その結果、各ペプチドあたり0.3㎎~3㎎のいずれの用量においても重篤な有害事象は認められず安全性が確認され、免疫学的最少有効量1㎎が決定された。また、KRM-10に関しては進行消化管がん患者18例を対象に第I相試験(臨床研究)を実施中であり、現時点までに重篤な有害事象は認められていない。以上の結果より、早期第2相試験を1㎎で実施することが推奨された。
2: おおむね順調に進展している
当初の予定では24年度以降は以下の研究を実施することとなっている。1)マウスモデルによる混合ワクチンの免疫学的解析。2)マウスモデルによる混合ワクチンの抗腫瘍効果の検討。3)マルチペプチド混合ワクチン臨床試験参加者の免疫学的解析。4)予後因子としての各種遺伝子発現の探索。当初予定立案時には臨床試験の具体的な実施計画はなかったために、1)2)の動物での作用機序の解析を先行して行い、その後、臨床試験の実施準備に入る予定であった。しかしながら、24年度に第I相臨床試験が医師主導治験として開始予定となったために、動物による毒性試験を実施し、この試験結果をもって臨床試験に入ることができた。第I相臨床試験は25年度に終了し、ヒトでの安全性と免疫学的最少有効量も決定された。さらに25年度からは早期第2相臨床試験も開始が決定したことより、当初の予定以上にプロジェクト全体は前進したと判断され、「おおむね順調に進展している」と自己評価した。
当初の予定では、24年度以降、以下の研究課題についても実施することとなっている。1)マウスモデルによる混合ワクチンの免疫学的解析。2)マウスモデルによる混合ワクチンの抗腫瘍効果の検討。3)マルチペプチド混合ワクチン臨床試験参加者の免疫学的解析。4)予後因子としての各種遺伝子発現の探索。24年度にマルチペプチド混合ワクチンを用いた第I相臨床試験が医師主導治験として実施、さらには25年度には早期第2相試験が開始予定となった。そこで、1)および2)のマウスモデルによる作用機序の解析は優先順位を下げ、25年度は特に、3)マルチペプチド混合ワクチン臨床試験参加者の免疫学的解析、および4)予後因子としての各種遺伝子発現の探索、について重点的に研究を進めることとする。
当初申請書に示された予算のとおりであり、変更はない。
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すべて 雑誌論文 (10件) (うち査読あり 8件) 学会発表 (3件) 備考 (1件) 産業財産権 (1件) (うち外国 1件)
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http://www.med.kurume-u.ac.jp/med/sentanca/index.html