研究課題
ヒト胃癌発見のバイオマーカーとして、血清TFF3がよいことがわかったが、胃切除をしても血清TFF3は低下せず、その起源は胃ではないことが想定された。これを調べるべく、マウス、ラットに化学発癌を施し、胃癌を作成した。マウスにはH. pylori感染+MNU投与、ラットにはMNNG投与を施行した。ラットでは犠死まで生存した20匹中19匹に、マウスでは犠死まで生存した15匹すべてに胃癌が形成されていた。担胃癌動物では、マウス、ラットともにコントロール動物に比し、血清TFF3は高値であった。ラットでは胃切除をしても血清TFF3は低下せず、ヒトと同様の現象が認められた。マウス、ラットで各種臓器を摘出し、担胃癌動物でTFF3タンパク、TFF3 mRNAが上昇している臓器を同定したところ、肝臓において、担胃癌動物でコントロール動物に比し、有意にTFF3の発現が高値であった。小腸、大腸では逆にTFF3の発現は低下していた。膵癌患者で行ったデータでも、血清TFF3は高値で、かつ、切除をしても低下せず、同様であった。TFF3の発現はIL-4, IL-13といったTh2サイトカインで誘導されることが知られており、がんにより免疫抑制状態があり、それによるサイトカインが肝臓よりTFF3の発現の上昇を誘導しているものと思われた。正常発現部位ではネガテイブフィードバックがかかっているものと思われた。ヒトの研究において、胃切除後半年でも血清TFF3高値は低下せず、さらに長期に経過すると低下する傾向にあり、がんを切除しても免疫抑制状態はすぐには改善せず、この変化を血清TFF3は見ているものと思われた。以上の結果より、血清TFF3は汎担癌バイオマーカーとなることが示唆された。
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肝胆膵
巻: 68 ページ: 395-399