研究課題/領域番号 |
23501296
|
研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
波多野 直哉 神戸大学, 医学(系)研究科(研究院), グローバルCOE研究員 (10332280)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
キーワード | メタボロミクス / がん |
研究概要 |
がんは日本人の死亡原因の第1位であり、これを避けるためには早期発見が重要といわれている。国内では優れた画像検査技術はあるが、一般的な健康診断と同様に実施するのは、人材面・コスト面を考えると現実的ではなく、簡便なスクリーニング法を開発する必要がある。そこで、がんの早期スクリーニング法として、がん患者特有の血中代謝物のプロファイルを利用する「代謝物プロファイリング」を用いることを考えた。 がん患者に特徴的な代謝物のプロファイルを取得するために、質量分析計を用いたヒト血清メタボロミクスの解析システムの確立を行った。具体的には、代謝物の抽出法、測定に適した誘導体化法やカラムの検討を行った。質量分析計としては、ガスクロマトグラフィー-質量分析計(GC-MS)を用いることにした。四重極型のGC-MSは、ダイナミックレンジが大きく、血中に存在する代謝物のように、含有量にばらつきが大きいサンプルを解析するのに最も適している。その結果、ヒト血清サンプルを用いて、安定的に60種類程度の血清中の水溶性代謝物(有機酸、アミノ酸、脂肪酸など)の測定が可能となった。 この解析法を、膵臓がん患者と健常者の数十例の血清サンプルを用いて実施したところ、複数の代謝物で統計的に有意な変動がみられた。 この方法は、少量の血清(50μl)で実施できるため、健康診断で採取する血液の一部を使って、早期診断ができる可能性がある。また、ある特定の疾患に特徴的なプロファイルを得られれば、他のがんはもちろんのこと、患者数の多い心臓病や糖尿病などの他の疾患にも応用できる可能性があるため、この研究は意義あるものと考えている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
まず最初の研究目的であった、質量分析計を用いてのヒト血清メタボロミクスの解析プロトコールが確立できた。懸念としていた再現性もよく、当初の計画通り、おおむね順調に進展していると考える。
|
今後の研究の推進方策 |
上記の方法で得られたデータを使って、がん患者群と健常者群のグルーピング寄与する代謝物を、統計解析の一つの方法である多変量解析によって調べる。これには、統計解析ソフトウェアであるSIMCA-P+を用い、主成分分析(PCA)あるいは、判別分析(PLS-DA)によるローディングプロットで、このグルーピングに寄与する代謝物を同定する。 また、得られたプロファイルが膵臓がん特異的なものかを調べるため、様々ながん種の培養細胞を用いたメタボロミクスを実施しようと考えている。さらに、その代謝物プロファイルの違いの機序を明らかにするために、代謝にかかわる酵素についても網羅的に調べることを考えている。
|
次年度の研究費の使用計画 |
次年度の実験に必要な試薬・消耗品の他に、統計解析用のソフトなどの物品費を計上している。これは、質量分析計で得た代謝物の定量データの多変量解析に必要なソフトである。さらに、研究成果発表・情報収集のための国内旅費や実験に用いる機器の使用料等を計上している。
|