研究課題/領域番号 |
23501302
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研究機関 | 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究 |
研究代表者 |
長谷 和生 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究, 医学教育部医学科専門課程, 教授 (50511268)
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研究分担者 |
橋口 陽二郎 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究, 医学教育部医学科専門課程, 准教授 (60251253)
上野 秀樹 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究, 病院, 講師 (90597535)
松原 修 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究, 医学教育部医学科専門課程, 教授 (40107248)
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キーワード | 大腸がん / 組織マイクロアレイ |
研究概要 |
我々は、大腸癌先進部の組織所見に注目、形態学的にも分子生物学的にも腫瘍中央部とは性格を異にし、悪性度規定因子として重要であると報告してきた。また、組織採取部位を明確にした組織マイクロアレイ(TMA)作成法(area-specific TMA)を考案、大腸癌先進部の特殊性を解析するに適したツールとして報告した。area-specific TMAとは、4部位(粘膜下層内先進部、漿膜下層内先進部、腫瘍中央部、周堤部) から採取した円柱状組織からTMAブロックを作成するもので、先進部における発現を客観的に評価することが可能となる。以上これまでの研究成果をもとに、今回、癌先進部の特徴や臨床的意義を明らかにすることを目的とし、area-specific TMAを活用して広くタンパク発現を検討する研究を立案した。多数の大腸癌症例を対象として、area-specific TMAを作成し、部位別のタンパク発現を免疫組織化学の手法を用い検討、部位によって異なった発現率や臨床的意義を示す分子を検索することで、先進部における発現が悪性度規定因子として重要である分子の同定へとつながると期待される。 現在、3年の研究期間のうち2年が終了、1997年から2005年までに切除を行ったstageII大腸癌患者で、3年以上の経過が観察できた300症例を対象に選定、先進部の形態学的悪性度の指標となる簇出およびcytoplasmic podiaの評価を実施した。また、area-specific TMAの作成およびその薄切も完了した。引き続き、浸潤に関するマーカー、Stem cellマーカー、粘液形質のマーカーなどのタンパク発現の検討を行い、予後因子としての意義について検討を進めている。今後、さらに検索の範囲を広げ、その意義について検討を進める予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までに達成できた項目を以下に示す。 1)防衛医科大学校において1997年から2005年までに根治手術が行われたstageII大腸癌症例の臨床経過を調査、3年以上の経過の確認できている300症例を対象として選定。2)HE染色標本から先進部における低分化傾向の指標である簇出の評価を行うとともに、先進部・周堤・腫瘍中央を含む代表的切片を選定。3)約600ブロックの薄切を実施、サイトケラチンの免疫組織化学染色の後、cytoplasmic podiaを評価。4)HE染色標本から、TMA用の組織を採取する4部位(粘膜下層内における浸潤先進部、漿膜下層内における浸潤先進部、腫瘍中央部、腫瘍周堤部)の選定を行い、Tissue Microarrayer (Beecher Instruments, Silver Spring, MD)にて直径2mmの円柱状組織を採取、area-specific four-point TMAのブロック(24ケ)を作成。5)TMAブロックを薄切(1ブロックにつき150枚程度の薄切を実施)。 以上の1)-5)まで完了した。現在、免疫組織化学染色の手法によりタンパク発現について検索中である。特に、浸潤に関するマーカー、Stem cellマーカー、粘液形質のマーカーなどに対し検討を進めている。進捗状況は順調で、はじめに申請書に記載した通りに進行している。今後、タンパク発現解析をさらにすすめることで癌先進部の特徴や臨床的意義を明らかにすることができると考える。なお、すべての研究は、防衛医科大学校倫理委員会の承認の後、実施されている。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究計画を以下に示す。 1)免疫組織化学染色の手法によりタンパク発現について広く検索する。細胞接着に関するマーカー、細胞増殖に関するマーカー、細胞周期に関するマーカー、アポトーシスに関するマーカー、リンパ球マーカーなどについて検討を進める。2)検鏡によりTMAプレパラート上の径2mmの組織中におけるそれぞれのタンパク発現について評価を実施。それぞれのタンパクの予後との相関、先進部形態との相関、それぞれのタンパク同士の相関を検討。各タンパクの部位別の悪性度規定因子としての意義、先進部低分化傾向との関連性を調べることで、癌浸潤に密接に関連する分子を選別する。部位に特化した分子同士の発現の相関を調べることで、それぞれの相互関係について推察する。 以上を予定する。はじめに申請書に記載した計画に従い研究を進める予定である。なお、研究成果が得られれば、適宜、学会や論文を利用し報告する。
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次年度の研究費の使用計画 |
今後、免疫染色に使用する1次抗体が多種類必要となる見込みである(1種類5-10万円を30種類程度)、また2次抗体(合計で30万円程度)も必要となるため、購入を予定している。 その他、薄切や免疫組織化学染色、プレパラート作成に必要な消耗品も購入予定である。 研究の成果が逐次得られると考えられ、国内学会での発表(経費:1回あたり5万円程度、2回)も予定している。
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