新規癌特異的糖鎖抗原の腫瘍マーカーとしての応用

2013 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 23501303
• 研究機関: 地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪府立成人病センター(研究所)
• 研究代表者: 宮本 泰豪 地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪府立成人病センター(研究所), その他部局等, 研究員 (90322742)
• キーワード: 糖鎖

研究概要

我々は、大腸癌、膵臓癌の糖脂質の詳細な構造解析を行った結果、ルイス型血液型が陰性の人に特異的に発現する癌特異的糖鎖抗原Sialyl Type1H(ST1H)の存在を発見した。本研究の目的は、ST1Hを特異的に認識する単クローン抗体を作成し、ヒト血清でのST1H抗原量を測定するELISA系を構築し、腫瘍マーカーとしての有用性を評価することである。昨年度までに、合成した糖脂質ST1Hをマウスに免疫し、定法に従ってハイブリドーマを得た。ELISA法を用いてスクリーニングを行い、ST1Hを特異的に認識するが、他の異性体ST2H, Sialyl Lex, Sialyl Leaをほとんど認識しない単クローン抗体を11種類得た。免疫組織化学を用いて、これらのクローンをさらに検討した。サンプルには、ST1Hの発現が確認されているルイス型陰性の大腸癌組織、正常大腸組織を用いた。ST1Hのモノクローナル抗体である、23D11は、本来なら、ルイス陰性(Le-)の患者の大腸癌で陽性シグナルが観察されるはずであるが、固定法などをいろいろ検討したが、陽性シグナルは観察されなかった。23D11以外の10種類の抗体も、同様であった。今年度は、免疫原をST1H陽性の大腸癌細胞に変更し、再度、マウスに免疫し、定法に従ってハイブリドーマを得た。2000クローンを、ELISA法を用いてスクリーニングした。その結果、ST1Hは認識するが、異性体であるST2Hをほとんど認識しないクローンを２種類得た。今後は、これらのクローンを詳細に解析する必要がある。

研究成果

• [雑誌論文] Accumulation of free Neu5Ac-containing complex-type N-glycans in human pancreatic cancers (2013)
  • 著者名/発表者名: Yabu, M., Korekane, H., Takahashi, H., Ohigashi, H., Ishikawa, O., Miyamoto, Y.
  • 雑誌名: Glycoconj J 巻: 30(3) ページ: 247-256
  • DOI: 10.1007/s10719-012-9435-9
  • 査読あり
• [雑誌論文] Occurrence of free deaminoneuraminic acid (KDN)-containing complex-type N-glycans in human prostate cancers. (2013)
  • 著者名/発表者名: Yabu, M., Korekane, H., Hatano, K., Kaneda, Y., Nonomura, N., Sato, C., Kitajima, K., Miyamoto, Y
  • 雑誌名: Glycobiology 巻: 23(6) ページ: 634-642
  • DOI: . doi:cws132 [pii]
  • 査読あり
• [雑誌論文] Identification of Ectonucleotide Pyrophosphatase/Phosphodiesterase 3 (ENPP3) as a Regulator of N-Acetylglucosaminyltransferase GnT-IX (GnT-Vb). (2013)
  • 著者名/発表者名: Korekane, H., Park, J.Y., Matsumoto, A., Nakajima, K., Takamatsu, S., Ohtsubo, K., Miyamoto, Y., Hanashima, S., Kanekiyo, K., Kitazume, S., Yamaguchi, Y., Matsuo, I., Taniguchi, N.
  • 雑誌名: J Biol Chem 巻: 288(39) ページ: 27912-27926
  • DOI: doi:M113.474304 [pii]
  • 査読あり
• [学会発表] 病態解明に向けたグライコミクス-癌化に伴う糖鎖構造変化の高精度、高感度の解析を目指して (2013)
  • 著者名/発表者名: 宮本 泰豪
  • 学会等名: 第３２回日本糖質学会
  • 発表場所: 大阪市
  • 年月日: 20130805-20130807