研究課題
光感受性物質とレーザー光線を用いる光線力学的治療(PDT)は低侵襲性のがん治療法の一つとして知られる。5-アミノレブリン酸(以下5-ALA)は、従来のPDTで用いられてきたポルフィリン関連化合物とは異なり、腫瘍細胞内でヘム生合成経路の酵素群によりプロトポルフィリンIX (PpIX) に代謝され、光感受性物質として活性化される特徴を有し、腫瘍特異性の高い新世代の光感受性物質として注目されている。本研究では、5-ALAおよびPpIXの細胞膜輸送系の機能修飾作用を有し、5-ALA-PDTの効果増強に有用なリード化合物を創出することを目的とする。5-ALAのがん細胞における集積性とPpIX産生の促進を図り、微弱な励起エネルギーでも細胞内で十分な活性酸素を産生する条件を整えることができれば、これまで適応がなかった腹膜播種や中皮腫、がん性腹膜炎や胸膜炎などにも5-ALA-PDTの応用範囲が広がることが期待される。平成24年度は低分子化合物ライブラリーを用いて5-ALA-PDTに対する感受性増強剤のスクリーニングを実施し、5-ALAと同時処理をすることでPDT効果を相乗的に増強することができる化合物を見出した。この化合物で処理したがん細胞では細胞内PpIXが著しく増加していることが明らかになった。一方、ヒト胃癌細胞MKN-45より樹立した獲得耐性細胞の耐性化機構に関する研究ではPEPT1とABCG2を含む複数のアミノ酸トランスポーターやABCトランスポーターの発現が変化している以外にも、ヘムの分解酵素であるheme oxygenase (decycling) 1やbilirubinの細胞外排出に関わるトランスポーターの発現が亢進していることが明らかになり、ヘム分解系の活性化も耐性獲得に関与する可能性が示された。
2: おおむね順調に進展している
5-ALA-PDTの効果を相乗的に増強できる化合物を見出し、その化合物が細胞内PpIX量を顕著に増加させることを確認できた。また、独自に樹立した獲得耐性細胞において、PpIX蓄積量の減少が耐性化の重要な機序となっていることを明らかにできた。
本年度の研究で、低分子化合物ライブラリーを用いて感受性増強剤のスクリーニングを実施し、有望な候補化合物を見出すことができたことから、次年度は構造類似化合物を用いて構造活性相関を明らかにすると共に、より有用な誘導体の開発を行う。さらに、5-ALA-PDT感受性増強剤のin vivo評価を実施する予定である。
該当なし
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Photodiagnosis and Photodynamic Therapy
巻: 印刷中 ページ: -
10.1016/j.pdpdt.2013.02.001
ALA-Porphyrin Science (ISSN 2187-1639)
巻: 1(1) ページ: 23-31