研究課題
光感受性物質とレーザー光線を用いる光線力学的治療(PDT)は低侵襲性のがん治療法の一つである。5-アミノレブリン酸(5-ALA)は腫瘍細胞内で光感受性物質であるプロトポルフィリンIX (PpIX) に代謝、活性化される腫瘍特異性の高い新世代の光増感物質として注目されている。本研究では、5-ALAおよびPpIXの膜輸送系の機能修飾作用を有し、5-ALA-PDTの効果増強に有用なリード化合物を創出することを目的とした。初年度はPpIXの排出トランスポーターABCG2に対する阻害剤(fumitremorgin Cやジピリダモール)が5-ALA輸送系のPEPT1を発現するがん細胞においてPDT感受性を増強し、PEPT1とABCG2の双方が重要な感受性規定因子であることを報告した。24年度には、5-ALA-PDT耐性化機構の研究でアミノ酸トランスポーターやABCトランスポーターの発現の変化以外にも、ヘム分解酵素heme oxygenase 1やその代謝産物bilirubinの排出トランスポーターの発現が耐性細胞で亢進していること、化合物ライブラリーを用いた効果増強剤のスクリーニングでは5-ALAとの同時処理によりPDT効果を相乗的に増強するTX-816を見出した。TX-816は細胞内PpIX量を増加させ、耐性細胞のPDT感受性も回復させた。本年度は耐性細胞で発現が低下しているカチオン性アミノ酸トランスポーターや鉄イオントランスポーターの強制発現実験によりそれらが5-ALA-PDT感受性に直接的には関与しないことを明らかにした。本研究では、細胞内PpIX量を増加させることで5-ALA-PDT効果を増強できるリード化合物TX-816を得ることができた。今後TX-816の誘導体展開を実施することで、適応がなかったがんの治療などにも5-ALA-PDTの応用範囲が広がることが期待される。
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Photodiagnosis Photodyn Ther.
巻: 10(3) ページ: 288-295
10.1016/j.pdpdt.2013.02.001.