研究概要 |
本研究は平成23年から平成25年度までの3年計画で進められてきた。この研究の目的は難治性AMLに対する抗体薬物結合体(ADC)治療薬の開発である。 申請者はモノクローナル抗体と混合するだけで簡便にイミュノトキシンを形成できるリコンビナントタンパク質(DT3C)の作製に成功した。DT3Cはモノクローナル抗体との結合体形成(モノクローナル抗体―DT3C結合体:MoAb-DT3C)が容易であり、MoAb-DT3Cを腫瘍細胞に作用することで細胞内へ移行されタンパク合成阻害により強力な殺細胞効果を示す。このDT3Cを用いた抗体スクリーニングに利用することでADC治療薬に適したモノクローナル抗体を得ることが可能である。申請者は急性骨髄性白血病およびその他の骨髄性白血病細胞株であるTF1, MY, KG1, SKM1, HL60, MEG01などをBalb/cマウスに免疫し抗体ライブラリーを作製、DT3Cを用いた抗体スクリーニングを利用してモノクローナル抗体を樹立した。現在までに157個のモノクローナル抗体が樹立され77抗体の抗原が同定された。同定された標的分子はCD38, CD43, CD44, CD47, CD71, CD81, CD99, CD102, CD147, CD151, CD317, CD321, MHC ClassI, MHC ClassIIの14種類である。これらの抗体は強い殺細胞効果を示しいずれも治療薬の候補抗体といえる。しかしながら、副作用のリスクを考えるとこれら全ての抗体が治療薬候補とはならない。これらの標的分子の中で特に治療薬の候補になる抗体の条件は正常主要臓器(特に腎臓、肝臓、脳、心臓など)における発現が低いことが挙げられる。申請者らはBioGPSなどのデータベースを活用して主要正常臓器での発現が低い標的抗原について検索した。正常主要臓器での発現が低い標的分子はCD38, CD43, CD47, CD71であった。これらについて難治性AMLに対するADC治療薬としての有用性について評価を進めていきたい。
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