研究課題
本研究では、がん幹細胞の維持に関与すると報告されている、Hedgehog-Gliシグナルに着目し、慢性骨髄性白血病の幹細胞に対して、バイオロジカルな意義と他の因子とのクロストークを検討した。また、Hedgehog阻害薬を中心とした薬剤の効果とシグナル伝達の検索、Hedgehog阻害とABL阻害薬による、白血病幹細胞への作用や発現の検討とその予測を中心に研究を行った。まず患者サンプル、Ph陽性白血病細胞細胞株でHedgehogシグナル(Shh、Gli1、Gli2)の発現を確認した。次にHedgehog-Gli阻害薬であるGDC-0449を用い、白血病細胞の形態変化、コロニーアッセイによる増殖能の検討、FACSによる、アポトーシスアッセイ、イムノブロットによる検証を行った。またfeeder cellの存在下で、培養で細胞の増殖が促進されることを確認した。この系では、Hedgehog-Gliの発現の増加がイムノブロット法により確認された。次にSHHの投与では、腫瘍細胞増殖能が増強した。またfeeder cellの存在下では、ABL阻害薬による、アポトーシス誘導は減少し、GDC-0449とABL阻害薬の併用が、抗腫瘍効果を増強することを見いだした。またABL阻害薬とHedgehog阻害薬併用の効果をin vivoで確認した。以上をまとめ、報告した。
2: おおむね順調に進展している
患者サンプルの収集も含め、計画どおりに進行するものと考える。さらに、Hedgehog-Gliが、CML細胞の維持に関与する可能性を示唆する結果が得られており、このことから、少なくとも新しい調節機構が存在することを示す成果が、今後も得られると期待できる。
Hedgehog-Gliの作用を培養細胞株、動物実験を用いて検討し、その機序を明らかにする。また、白血病幹細胞の維持進展に関与する分子を明らかにし、阻害薬の開発と臨床へのフィードバックを行う。
1.ノックアウトマウスによる、Hedgehog-Gliの機能解析8-10週のGli1-/-、Gli2-/-、Gli3-/-と移植レシピエントマウス(C57BL/6 CD45.1)を使用する。マウス骨髄細胞を採取し、Ter119、Mac-1、B220、CD3で刺激し、FACSにて検討する。またc-Kit+Lin-Sca-1+Flt3- (KLSF)をFACSにてソーティングを行い、放射線照射後のレシピエントマウスに移植、24週後にキメラリズムを解析する。次にマウス造血細胞をSCF、TPO存在下で培養、MSCV-BCR-ABL-1-IRES-GFPとMSCV-IRES-GFPに感染させ、48時間後に放射線照射後のマウスに移植する。移植後に体重、脾臓の重量、血液中の細胞に関して検討する。白血病発症の確認後、KLS-GFP陽性細胞、KLSF細胞をimatinib、dasatinib、nilotinib、cyclopamine、GDC-0449存在下でメチルセルロースによるコロニーアッセイを行う。また得られたコロニーに対し、再度コロニーアッセイを繰り返し行い、コロニー形成能の変化について検討する。また白血病発症マウスに対し、imatinib、dasatinib、nilotinib、cyclopamine、GDC-0449の併用投与を行い、生存率の検証を行い、GFPをマーカーとして、微小残存病変とHedgehog-Gliの関係について検討する。また、プライマリーサンプルも使用し、腫瘍形成能等を検討する。
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