研究課題/領域番号 |
23501316
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
岡本 邦男 近畿大学, 医学部附属病院, 助教 (90460865)
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研究分担者 |
中川 和彦 近畿大学, 医学部, 教授 (40298964)
岡本 勇 近畿大学, 医学部, 准教授 (10411597)
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キーワード | 臨床腫瘍学 / 分子標的治療 / EGFR / ゲフィニチブ |
研究概要 |
今回我々が樹立したサバイビン高発現株(PC9/Survivin、HCC827/Survivin)と、その親株であるEGFR遺伝子変異陽性細胞株(PC9、HCC827)において、EGFR阻害剤の1つであるゲフィチニブにより引き起こされるEGFRの下流シグナルの変化とアポトーシスをWestern blot法及びAnnexin法にて検討したところ、サバイビン高発現株においてはゲフィチニブによるサバイビンの発現低下が抑制され、アポトーシスを生じなくなることが確認された。この変化はヌードマウスを用いたin vivoの実験においても同様であり、サバイビン高発現株でできた腫瘍はゲフィチニブに耐性を示すことが確認された。これらの結果によってEGFR阻害剤暴露時のサバイビン発現量の低下がEGFR阻害剤によって引き起こされるアポトーシスと関連していることが証明された。 そこで、次にEGFR阻害剤に対してde novo耐性であるPTEN欠失を伴うEGFR変異陽性非小細胞肺癌株を用いた実験を行った。これらの細胞株においてはEGFR阻害剤を暴露してもサバイビンの発現低下が生じず、アポトーシスを生じないが、サバイビンに特異的なsiRNAやサバイビン特異的分子標的治療薬であるYM155を用いてサバイビンの発現量を低下させた状態でEGFR阻害剤の1つであるエルロチニブを暴露させることで、これらの細胞株にアポトーシスを生じさせうることを見出した。さらにヌードマウスを用いたin vivoの実験においてもエルロチニブ経口投与とYM155の皮下持続投与の併用療法によってEGFR阻害剤耐性のEGFR遺伝子変異陽性細胞を克服することが出来た。これらの基礎的研究成果を論文として報告した(Mol Cancer Ther. 2012 Jan;11(1):204-13)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
我々はこれまでの基礎研究によって、EGFRチロシンキナーゼ阻害剤によるアポトーシスにおいてサバイビンの発現低下が重要な役割を果たしていることを見出した。そしてEGFR阻害剤に耐性を示すEGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺癌株に対して、EGFR阻害剤であるエルロチニブとサバイビン阻害剤であるYM155の併用を行うことでその耐性を克服し、これらの細胞にアポトーシスを生じさせることができることをin vitro、in vivoにおいて証明し、エルロチニブとYM155の併用療法がEGFR阻害剤の耐性を克服できる可能性があること見出し、研究成果を論文として報告した(Mol Cancer Ther. 2012 Jan;11(1):204-13)。 サバイビン特異的分子標的治療薬であるYM155は、日本においても当院を含めた多施設第I相臨床試験が終了しており、臨床開発が進んでいる薬剤である(Clin Cancer Res. 2009 ;15(11):3872-80)。YM155の毒性は非常に軽度であり、エルロチニブで問題となる間質性肺炎や肝機能障害などの副作用との重複もないことから、エルロチニブとの併用療法は充分に認容可能と考えられる。 今回の基礎的研究成果をもとに平成25年1月より当院において「進行非小細胞肺癌を対象としたYM155/エルロチニブ゙分子標的治療薬併用臨床第I相試験」を医師主導治験として実施し、すでに症例の集積を開始している。
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今後の研究の推進方策 |
我々はこれまでの基礎研究によって、EGFRチロシンキナーゼ阻害剤によるアポトーシスにおいてサバイビンの発現低下が重要な役割を果たしていることを見出した。そしてEGFR阻害剤に耐性を示すEGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺癌株に対して、EGFR阻害剤であるエルロチニブとサバイビン阻害剤であるYM155の併用を行うことでその耐性を克服し、これらの細胞にアポトーシスを生じさせることができることをin vitro、in vivoにおいて証明し、エルロチニブとYM155の併用療法がEGFR阻害剤の耐性を克服できる可能性があること見出し、研究成果を論文として報告した(Mol Cancer Ther. 2012 Jan;11(1):204-13)。 この研究成果をもとに、平成25年1月より当院において「進行非小細胞肺癌を対象としたYM155/エルロチニブ゙分子標的治療薬併用臨床第I相試験」を医師主導治験として実施し、すでに症例の集積を開始している。対象となったEGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺癌患者の病理診断・組織型診断に用いられた手術もしくは組織生検検体、ならびに新たに治療中に得られた組織検体から薄切標本を作成し、サバイビンやPTENの遺伝子変異ならびに蛋白発現を検討し、治療の無増悪生存期間や患者の予後などとの相関関係を検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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