我々はこれまでの基礎研究によって、EGFRチロシンキナーゼ阻害剤によるアポトーシスにおいてサバイビンの発現低下が重要な役割を果たしていることを見出した。そしてEGFR阻害剤に耐性を示すEGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺癌株に対して、EGFR阻害剤であるエルロチニブとサバイビン阻害剤であるYM155の併用を行うことでその耐性を克服し、これらの細胞にアポトーシスを生じさせることができることをin vitro、in vivoにおいて証明し、エルロチニブとYM155の併用療法がEGFR阻害剤の耐性を克服できる可能性があること見出し、研究成果を論文として報告した(Mol Cancer Ther. 2012 Jan;11(1):204-13)。 この研究成果をもとに、平成25年1月より当院において「進行非小細胞肺癌を対象としたYM155/エルロチニブ゙分子標的治療薬併用臨床第I相試験」を医師主導治験として実施し症例の集積を開始しており現在登録中である。対象となったEGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺癌患者の病理診断・組織型診断に用いられた手術もしくは組織生検検体、ならびに新たに治療中に得られた組織検体から薄切標本を作成し、サバイビンやPTENの遺伝子変異ならびに蛋白発現を検討し、治療の無増悪生存期間や患者の予後などとの相関関係を検討する予定としている。
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