研究課題
高齢者に多い多発性骨髄腫患者に対して分子標的薬(ボルテゾミブ)と細胞障害性抗がん薬の併用療法の安全性・有効性を確認する多施設共同臨床試験を実施した。年齢中央値63歳の27例が登録され、完全奏効率30%(95% CI; 11-48%)、全奏効率は89%(95% CI; 76-100%)、無進行生存期間中央値は12.3ヵ月(95% CI; 6.1-18.5ヵ月)と優れた治療効果が得られた。Grade 4の血小板減少を30%、好中球減少を19%で認めたが、いずれも短期間で回復し、臨床上は出血や感染症など問題なく対応できた。本内容を第73回日本血液学会総会で発表し、現在論文準備中である。加齢に伴う身体的および精神的変化には大きな個人差がある。また認知症、せん妄、うつ、脆弱性、疲労、転倒など老年症候群と呼ばれる症状・徴候が高頻度に見られ、高齢者のがんの診断や治療を困難にしている。患者個々の身体的、精神的ならびに社会的機能を調べる評価方法を確立した。この評価方法を用いて高齢がん患者を対象に、治療の効果・有害事象との関連を後方視的に解析した。現在は前向き研究として高齢者の機能評価を行っている。この研究の中間結果を第10回日本臨床腫瘍学会総会で発表する。加齢に伴って身体機能、臓器機能が低下するため、高齢者に対して若年者と同様の薬物療法を行うと、治療関連毒性が強く出現する危険がある。臓器機能が低下した高齢がん患者に対してがん薬物療法を行う際に、薬物の体内動態を測定する臨床試験を立案し、病院IRBの承認を得た。現在研究を推進中である。
2: おおむね順調に進展している
高齢者に対する化学療法の質を向上させることが目的であるため、臨床研究を行う必要がある。臨床試験を行う場合は、病院のIRBで十分に審査を受けることが必要である。すでにIRBの承認を得た研究は順調に遂行できている。また平成23年度に新たに研究準備を始めたものも、予定通りにIRBの審査を通過した。
1) 高齢者の機能評価と長期予後の関連を明らかにする。高齢者の機能評価スコアの妥当性を検証する。1日歩数を用いたPS評価指標の妥当性を検証する。2) 機能評価に基づいて層別化した治療指針を作成する。高齢者に適したがん薬物療法レジメンを作成する。その有用性を検証する臨床試験を実施する。3) 臓器障害がある高齢者を対象に、薬物動態に基づいた治療法を確立する。肝腎機能などに基づく至適投与量・スケジュールの換算方式を作成する。4) 高齢がん患者の生活の質を向上させる対策を強化する。がん薬物療法時に見られる感覚性ニューロパチーを軽減する研究を行う。がん薬物療法時に出現する口内炎、味覚障害を軽減する研究を行う。
多施設共同臨床試験を実施した場合のデータ処理費薬物動態を測定する場合の機器使用費、消耗品費がん薬物療法に関する基礎研究費研究結果の発表、他の研究者との意見交換を行うための旅費
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