研究課題/領域番号 |
23501319
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研究機関 | 公益財団法人がん研究会 |
研究代表者 |
馬島 哲夫 公益財団法人がん研究会, がん化学療法センター分子生物治療研究部, 研究員 (30311228)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | がん幹細胞 / 前立腺がん / 分子標的治療 / 癌遺伝子 |
研究概要 |
前立腺がんでは、高い腫瘍形成能を有するがん幹細胞が存在し、内分泌療法抵抗性に関わることが強く示唆されている。しかしその性状については未だ不明である。本研究では、前立腺がん幹細胞の生存、維持における癌関連遺伝子産物の役割を検討し、またがん幹細胞選択的な増殖抑制作用を示すシグナル伝達阻害化合物やRNAiを探索する。これらにより、がん幹細胞の生存維持機構における癌化関連遺伝子の役割を明らかにし、さらにこれに関与する新しい因子を同定する。本年度はまず、前立腺がん細胞株を用いて、前立腺がん細胞集団よりがん幹細胞の分離を試みた。前立腺がん幹細胞マーカーとして知られるCD44/CD133の発現をまずFACSにより検討し、PC3およびDU145細胞で陽性分画があることを確認した。さらにセルソーティングによりCD44/CD133陽性および陰性分画を分離し、陽性分画において、1)自己複製能、2)分化能、3)免疫不全マウスでの少数細胞からの造腫瘍性を確認した。またスフェア培養により、CD44/CD133陽性分画が選択的に増殖し、濃縮されることもわかった。これらより、複数の既報の論文に示す通り、CD44/CD133陽性分画は、がん幹細胞分画と考えられた。また、がん幹細胞が濃縮されているスフェア培養細胞、および、非がん幹細胞が大部分を占めると考えられるもとのがん細胞の両者よりRNAを抽出し、遺伝子発現解析をおこない、両細胞集団間での遺伝子発現の差異を検討した。我々はさらに、数種の前立腺がん臨床サンプルを取得し、安定培養可能な細胞やがん幹細胞の分離を現在試みている。これまで、いくつかの培養液やスフェア培養により長期生存可能な細胞があるかを検討したが、いまのところそのような細胞は得られていない。今後、免疫不全マウスへの臨床腫瘍の打ち込みによる腫瘍細胞の選択を試みるため、現在その準備を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は前立腺がん細胞株を用い、がん幹細胞分画の分離やそれに関連する実験系の立ち上げをおおむね完了できた。またがん幹細胞分画(スフェア細胞)での遺伝子発現解析も行なった。その意味でおおむね予定通り遂行できたと考えている。これらを用いて次年度以降、より詳細な解析を進める予定である。臨床サンプルからのがん幹細胞の分離については今後の課題となる。
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今後の研究の推進方策 |
細胞株を用いて確立したがん幹細胞分画の分離やそれに関連する実験系を用いて、より詳細な分子機構の解析を進めるとともに、臨床サンプルからのがん幹細胞の分離を精力的に試みる。具体的には、前立腺がん幹細胞の生存、維持、分化における各種癌関連因子の機能について、遺伝子ノックダウン法等を用いて解析する。逆に正常前立腺上皮細胞に癌関連因子を協調的に導入することでがん幹細胞の性質が獲得されるかについて検討する。さらに化合物ライブラリーおよびRNAiライブラリーを用いて、がん幹細胞に選択的に細胞増殖抑制作用を示す薬剤、RNAiを探索する。
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次年度の研究費の使用計画 |
各種癌関連因子の機能について、遺伝子ノックダウン法等を用いて解析する。そのため、shRNAや関連抗体、さらに実験に必要な試薬等などを購入する。前立腺上皮細胞に導入予定の癌関連因子の遺伝子ベクターについてはすでに手元にある。さらに化合物ライブラリーおよびRNAiライブラリーについても入手済みである。したがって研究費の大部分は、細胞培養や動物実験全般に必要な試薬、ディスポーザブル製品、実験動物の講入に用いる予定である。ただし学会発表用の旅費は研究費内で一部確保する。
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