研究課題/領域番号 |
23501320
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研究機関 | 公益財団法人がん研究会 |
研究代表者 |
三嶋 雄二 公益財団法人がん研究会, がん化学療法センター臨床部, 研究員 (10442550)
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研究分担者 |
照井 康仁 公益財団法人がん研究会, がん化学療法センター臨床部, 研究員 (10285786)
松阪 諭 公益財団法人がん研究会, がん化学療法センター臨床部, 研究員 (00372665)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 末梢循環腫瘍細胞 / 蛍光免疫染色 / FISH / Her2 / スフェロイド |
研究概要 |
本年度の研究実施計画に従い、下記3項目の研究課題において研究を実施した。課題(1):蛍光3次元トモグラフィーによる腫瘍標本のマルチチャンネル解析:胃癌延べ145症例について、文書による同意取得後末梢血10mLを採取し、末梢循環腫瘍細胞(CTC)の同定とHer-2、FGFR2遺伝子増幅を解析した。Her2は126例、FGFR2は95例についてCTCを検出し遺伝子増幅の有無の判定が可能であった。これは同時に実施した先行技術であるVeridex社の手法におけるCTC検出率54%と比較して有意に高く、さらにより高精度なFISH法により遺伝子増幅症例を識別することを可能にしたことで、癌の分子標的治療の発展とともに期待が高まっている"Liquid biopsy"による腫瘍の遺伝子異常解析を可能する上で重要な研究成果である。課題(2):イメージングデータと臨床予後の相関解析:次年度以降に向けて分担研究者(松阪)を治験責任医師として、課題(1)の手法を使用し原発Her2陰性でCTCにおいてHer2遺伝子増幅の検出された胃癌症例を対象に抗Her2抗体治療を実施する臨床研究を開始した。既に乳癌においては同様な臨床試験が欧米で開始されているが、胃癌に関しては本研究が世界で最初となり非常に意義深いと考える。課題(3):3次元培養による腫瘍幹細胞の表現型と薬剤感受性に関する検討:大腸癌、胃癌、乳癌の胸・腹水、外科切除検体より腫瘍細胞を精製しスフェロイド培養により長期間の維持培養を実施した。培養に供した検体は延べ148検体であり、そのうち十分な大きさのスフェロイド培養塊を形成した32検体については、フィブリンクロットを作成した後FFPE標本を作成した。本標本は次年度以降、組織マイクロアレイ(TMA)の作成を予定しており、その後の解析はTMAを用いて実施する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度の研究実施計画にしたがい、予定した研究を遂行し、十分な症例数の解析を実施した。研究計画は3つの課題からなり、以下各課題について進捗を説明する。課題(1):蛍光3次元トモグラフィーによる腫瘍標本のマルチチャンネル解析:胃癌は他の癌腫に先駆け、解析手法を確定することができたため、本年度100例を超える症例の解析を実施した。大腸癌に関しては、外科手術中に、切除腫瘍、末梢血、門脈血を採取し、原発腫瘍、末梢血CTC、門脈血CTCのそれぞれについて、蛍光トモグラフィー解析を実施し、特定のタンパク質の発現の差異とその意義について解析を開始した。本年度は50症例について検体の採取と保存を実施した。標識とトモグラフィ解析は、次年度以降実施を予定する。多発性骨髄腫に関しては、臨床上有用なt(4:14)によるFGFR3の転座について、蛍光トモグラフィによる解析を開始し、本年度は19例について解析を終了した。課題(2):イメージングデータと臨床予後の相関解析:本年度は当課題は実施を予定していなかったが、課題(1)の進捗が胃癌において著しかったことから、CTCによるHer2増幅症例に対する前向き臨床試験を実施するに至った。課題(3):3次元培養による腫瘍幹細胞の表現型と薬剤感受性に関する検討:これまでのわれわれのものをを含めた検討により、臨床検体由来腫瘍のスフェロイドは、増殖が極めて遅く、十分な直径を有するスフェロイドの形成には、概して数ヶ月を要することが示されている。本年度は早い時期から検体の収集を開始し、既に32症例のFFPEブロックを作成した。蛍光イメージングによる解析はさらに症例を蓄積し、スフェロイドマイクロアレイを作成後、他検体を同時に実施することを予定しており、検体収集は順調に推移している。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度は、代表研究者が国外の施設での研究留学を行うことが決定したため、代表研究者の研究計画を予定通り実施することが困難となる。これに伴い、実施計画通りの研究実績の達成は難しくなることが想定されるため、科学研究費助成を廃止する。ただし、本研究計画自体は分担研究者、研究支援人員により継続して遂行を予定する。
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次年度の研究費の使用計画 |
科学研究費助成を廃止し、研究助成による研究費を使用しない。
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