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2012 年度 実施状況報告書

癌-間質相互作用を標的とした抗癌剤の創薬基礎研究

研究課題

研究課題/領域番号 23501321
研究機関公益財団法人微生物化学研究会

研究代表者

川田 学  公益財団法人微生物化学研究会, 微生物化学研究所・沼津支所, 主席研究員 (20300808)

キーワード癌 / 生理活性物質 / 間質
研究概要

固形癌は癌細胞だけでなく周辺の間質が混在する形で成り立っている。この間質細胞と癌細胞の分泌因子や接着因子を介した癌―間質相互作用は、癌の増殖を促進するだけでなく、逆に抑制させることも明らかにされつつあり、その重要性が注目されている。我々はこの癌―間質相互作用を制御することで癌を抑制する新しいタイプの癌治療法および抗癌剤の開発を目指した創薬研究の基礎を確立することを目的として、本研究では様々な癌種を用いたスクリーニング系を構築して癌―間質相互作用を調節する低分子化合物を数多く見出し、その作用機構および抗癌活性を検討する。初年度である平成23年度では、膵癌、乳癌、大腸癌と各臓器由来の間質細胞を用いた新たな共培養スクリーニング系を構築し、既に構築した前立腺癌、胃癌、肺癌の共培養スクリーニング系も含め全6系の実験系でスクリーニングを実施した。その結果、胃癌の共培養スクリーニング系で新規化合物を発見した。平成24年度では、平成23年度にスタートした全6系の実験系でのスクリーニングを継続し、目的とする活性物質の探索を行うとともに、発見した新規化合物について更に検討を加えた。新規化合物は放線菌Nocardia sp. ML96-86F2株が産生する化合物であり、その活性からintervenolinと名付けた。全6系のスクリーニングで再評価した結果、intervenolinは胃癌に加えて大腸癌に対しても間質との共培養で癌細胞の増殖を強く阻害する活性を示した。また、放線菌の大量培養から評価サンプルを精製し、ヌードマウスにヒト胃癌細胞および大腸癌細胞を移植して抗癌活性を検討した結果、動物実験でも有意に抗癌活性を示すことが分かった。さらに、抗菌活性を検討した結果、ピロリ菌に対して選択的な抗菌活性も示すことが分かった。これらの結果を踏まえて、intervenolinの特許を出願した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

新規化合物intervenolinを放線菌培養液から発見し、その作用を平成23年度に構築した新たな実験系も含めて解析を行い、胃癌に加えて大腸癌に対しても有効であることがin vitroで示された。そして、実際にヌードマウスを用いた動物実験においてintervenolinが抗癌活性を有することが分かったことは極めて重要な成果である。今後、intervenolinの作用機構の解析を進め、抗癌剤リード化合物となることが期待される。

今後の研究の推進方策

引き続き、新しい活性物質の探索を継続するとともに、本研究から見出した新規化合物intervenolinの作用機構の解析および高次モデルでの動物実験で抗癌活性を検討し、抗癌剤リード化合物としての可能性を評価する。具体的には、間質細胞と癌細胞の共培養系で起きている現象の解析を中心に行うとともに、動物の高次モデルとしてヒト胃癌のマウス胃壁およびヒト大腸癌のマウス大腸壁への同所移植モデルを利用してintervenolinの抗癌活性を評価する。

次年度の研究費の使用計画

スクリーニングの継続と得られた活性物質の精製、および新規化合物intervenolinの作用機構の解析と高次動物モデルでの抗癌活性の評価を行う。そのため、研究費は細胞培養用の試薬とプラスチック器具、生化学試薬、実験動物などの消耗品にあてる計画である。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2013 2012 その他

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (1件) 備考 (1件) 産業財産権 (1件)

  • [雑誌論文] Decalpenic acid induces early osteoblastic markers in pluripotent mesenchymal cells via activation of retinoic acid receptor gamma.2012

    • 著者名/発表者名
      Sakamoto, S., Kojima, F., Momose, I., Kawada, M., Adachi, H., and Nishimura, Y.
    • 雑誌名

      Biochem. Biophys. Res. Commun.

      巻: 422 ページ: 751-757

    • DOI

      10.1016/j.bbrc.2012.05.075.

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Cleavage mechanism and anti-tumor activity of 3,6-epidioxy-1,10-bisaboladiene isolated from edible wild plants.2012

    • 著者名/発表者名
      Kimura, K., Sakamoto, Y., Fujisawa, N., Uesugi, S., Aburai, N., Kawada, M., Ohba, S., Yamori, T., Tsuchiya, E., and Koshino, H.
    • 雑誌名

      Bioorg. Med. Chem.

      巻: 20 ページ: 3887-3897

    • DOI

      10.1016/j.bmc.2012.04.025.

    • 査読あり
  • [学会発表] 新規化合物NBRI16716Aによるがんー間質相互作用の制御2012

    • 著者名/発表者名
      川田学、坂本修一、雨宮昌秀、増田徹、野本明男
    • 学会等名
      第71回日本癌学会学術総会
    • 発表場所
      ロイトン札幌(北海道)
    • 年月日
      20120920-20120920
  • [備考] 公益財団法人微生物化学研究会

    • URL

      http://www.bikaken.or.jp/

  • [産業財産権] 新規化合物、その製造方法、及びその用途、並びに、新規微生物2013

    • 発明者名
      川田学、井上裕幸、大庭俊一、波多野和樹、阿部光、他3名
    • 権利者名
      公益財団法人微生物化学研究会
    • 産業財産権種類
      特許
    • 産業財産権番号
      特願2013-035731
    • 出願年月日
      2013-02-26

URL: 

公開日: 2014-07-24  

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