研究概要 |
前年までに、びまん型胃がんでも強く発現するがん遺伝子候補GSDMB遺伝子に着目し、そのプロモーターをルシフェラーゼレポーターに組み込み、プロモーター活性を調べた。ヒトの腹膜中皮細胞MeT-5Aで活性が弱く、6種のびまん型胃がん細胞株44As3, 58As9, 60As6, HSC44, HSC58, HSC60で活性が強いプロモーターを期待したところ、GSDMBプロモーターが6種のびまん性胃がん細胞株中5株で強い活性を示し、腹膜中皮細胞では基本レポーターべクター程度の活性を示すのみだった。そこで、このGSDMBプロモーターを細胞殺傷用プラスミドベクターに組み込み、細胞死誘導活性を測定したところ、上記プロモーター活性の強い胃がん細胞に高い活性を認めた。最終年度は、HSVtk遺伝子を組み込んだレンチウイルスベクターの評価を行った。中皮細胞MeT-5AではGanciclovir(GCV)投与でほとんど殺細胞作用を認めなかったが、びまん型胃がん細胞60As6では、70%の細胞を殺傷した(p=0.002)。 次に、in vivo腹膜再発モデルマウスの試験を行った。このベクターは腫瘍内への遺伝子導入が充分でなくとも、バイスタンダード効果によって、染色体に組み込まれていない周囲のがん細胞や、殺傷から逃れた細胞分裂を休止させたがん細胞への効果が期待できる。実際に、106個の60As6細胞を腹腔に接種し、充分に生着が確認できる1週後からGCVを週1回腹腔内に投与し、30日後の生存の有無で評価したところ、GCV投与なしでは死亡率が67%であるのに対して、GCV投与では33%であった。現在、接種細胞数、GCVの投与量の組み合わせを増やし、統計的な有為差を検証中である。
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