研究課題/領域番号 |
23501323
|
研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
仲谷 和記 大阪市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (60295699)
|
研究分担者 |
魏 民 大阪市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (70336783)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
キーワード | 国際情報交流(アメリカ) |
研究概要 |
先行する「チオアセトアミド惹起肝障害を水素分子投与によって抑制する研究」の論文を作成・投稿するために、追加実験を行った。障害肝組織における酸化ストレスを検出する目的で、酸化的DNA障害のマーカー分子である8-オキソデオキシグアノシン(8OHdG)の免疫組織化学染色を行ったが、全ての群(肝障害モデル群、肝障害モデルに水素分子を投与した群、および両者の陰性対照群)において有意な染色が得られなかった。次いで、脂質過酸化物を検出するために4-ヒドロキシ-2-ノネナール(4HNE)の免疫組織化学染色を行ったが、これも有意な染色が得られなかった。そこで、4HNEを含む4-ヒドロキシアルケナールとマロンジアルデヒドの両者を定量的に解析出来るLPO586キットを用いて、脂質過酸化物の検出を試みた。その結果、チオアセトアミド惹起肝障害組織内に有意な過酸化脂質の増加を認め、水素分子投与によって過酸化脂質の産生が有意に抑制されることが明らかとなった。前年度までの検討では、水素分子投与による腫瘍壊死因子(TNF)αの産生抑制は有意ではなかったため、改めて検討を行ったところ、チオアセトアミド惹起肝障害組織内におけるTNFα産生量は水素分子投与によって有意に抑制されることが明らかとなった。すでに公表されている論文や各種学会・研究会における他の研究者の報告を分析し検討した結果、「肝病態モデル動物を用いた水素分子の発癌予防効果の評価」実験として当初予定していた脂肪肝炎モデルでは、先行する他の複数の研究グループと競合して論文化することが非常に困難であると判断し、銅代謝異常(ウイルソン病)モデルであるLong-Evans Cinnamon(LEC)ラットを用いた実験を開始した。さらに、7,12-ジメチルベンズアントラセン(DMBA)投与によるラット乳癌モデルでの検討も開始した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
先行する「チオアセトアミド惹起肝障害を水素分子投与によって抑制する研究」の論文を作成・投稿するための追加実験、特に障害肝組織における酸化ストレスの検出に難渋し、実験計画が遅れてしまった。また、すでに公表されている論文や各種学会・研究会における他の研究者の報告を分析し検討した結果、当初の実験計画に記載していた「DNAマイクロアレイを用いた網羅的解析」に関して、肝新鮮凍結標本を用いた網羅的解析は、他の研究者が先行していることが明らかとなった。そのため、肝新鮮凍結標本を用いた単純な検討ではなく、肝構成細胞それぞれを分離して検討することとし、現在、具体的な実験計画を研究分担者と協議中である。
|
今後の研究の推進方策 |
1. 病態モデル動物を用いた水素分子の発癌予防効果の評価:LECラットを用いて、水素分子が種々の臓器障害および発癌に与える影響を解析する。LECラットは生存率の低い雌ラットを用いる。また、DMBA投与によるラット乳癌モデルを用いた解析を行う。臓器障害・発癌率の評価は、血漿中の肝逸脱酵素・ビリルビンなどを測定し、シリウスレッド染色で線維化の程度を評価、線維化マーカーや前癌病変・早期癌病変マーカー・増殖因子・炎症性サイトカイン・ケモカイン・酸化ストレスマーカーなどの発現を免疫組織化学的・分子生物学的に解析して行う。2. DNAマイクロアレイを用いた網羅的解析: 8週齢のWistar系ラットに飽和水素水を4週間自由飲水させたものと陰性対照群として脱水素水を自由飲水させたものから肝構成細胞をそれぞれ分離・採取し、mRNAを抽出してビオチン標識cDNAを合成し、Affymetrix社のGeneChipシステムで解析する。3. 現在行っている「チオアセトアミド惹起肝障害を水素分子投与によって抑制する研究」で得られた成果を取りまとめ、論文の作成・投稿を可及的速やかに行う。
|
次年度の研究費の使用計画 |
1. 病態モデル動物を用いた水素分子の発癌予防効果の評価:平成23年度より実験を開始したLECラットに関して、文献上の発癌時期に至った個体に対し、種々の臓器障害・発癌の評価を行う。臓器障害・発癌率の評価は上記と同様に、血漿中の肝逸脱酵素・ビリルビンなどを測定し、シリウスレッド染色で線維化の程度を評価、線維化マーカーや前癌病変・早期癌病変マーカー・増殖因子・炎症性サイトカイン・ケモカイン・酸化ストレスマーカーなどの発現を免疫組織化学的・分子生物学的に解析して行う。また、DMBA投与によるラット乳癌モデルでは比較的短時間で乳癌が形成されるため、平成24年度中に解析出来なかった部分を検討し、出来るだけ早く実験結果を取りまとめ、論文を作成する。2. DNAマイクロアレイを用いた網羅的解析:平成24年度で得られた網羅的解析データを基に、飽和水素水投与群と陰性対照群を比較して発現に有意な差のある分子を選んで、リアルタイムPCRやウエスタン・ブロッティングなどによってmRNAおよび蛋白質レベルで定量解析を行い、網羅的解析の結果を確認する。3. 上記実験結果を取りまとめ、論文を作成する。さらに、国際学会で発表するなど、上記の研究成果を複数の媒体を通じて社会に対して発信する。
|