研究概要 |
堆肥化過程では、強力な温室効果ガスである一酸化二窒素(N2O)が発生する。本研究は、堆肥化で発生するN2O排出機構の解明ならびに堆肥化諸条件とN2O排出量の関連性からN2O排出予測を目指すことが目的である。平成23、24年度は、N2O排出量に関係している主要因子を追求し、堆肥原料中の硝酸態窒素または亜硝酸態窒素の存在がN2O排出量に深く関与していることを明らかにした。またN2O排出機構の解明においては、堆肥化過程の高温ステージ(約60℃)においてN2O生成を活性化させる微生物が存在し、それが脱窒菌の関与が示唆されていた。 そこで平成25年度においては、堆肥原料中の硝酸態窒素と亜硝酸態窒素の量がN2O排出量に及ぼす影響を調査し、N2O排出の予測を試みた。一方、N2O排出機構の解明については堆肥化の各温度ステージ(30,40,50,60,70℃)による微生物叢および硝化・脱窒遺伝子解析を行い、N2O排出に関与する微生物叢の特定を試みた。 その結果、堆肥化過程で発生するN2O排出量は、堆肥原料中の亜硝酸態窒素と硝酸態窒素量を高い相関性があることが示された。これからN2Oの排出予測式を導出することが可能であったが、実証堆肥化試験によって得られたN2O排出量等のデータとは一致せず適用が難しかった。しかしながら、堆肥原料中の亜硝酸態および硝酸態窒素量はN2O排出量と高い相関性があることからN2O排出を支配する主要因子であり、一層のデータ蓄積により精度の向上が可能と考えられる。一方、N2O排出機構の解明においては、2つの脱窒遺伝子(nirSおよびnosZ)の量が堆肥化の高温ステージで有意に増加した。これらの遺伝子をクローンライブラリ法で解析した結果、Pseudomonas-likeクラスターに属する脱窒菌であることが判明し、堆肥化過程のN2O排出機構は脱窒が支配していると考えられた。
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