研究課題/領域番号 |
23510004
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
戸田 任重 信州大学, 理学部, 教授 (60291382)
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研究分担者 |
宮原 裕一 信州大学, 山岳科学総合研究所, 准教授 (80311330)
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キーワード | 硝酸塩汚染 / 地下水 / 窒素安定同位体比 / 年代解析 / SF6 |
研究概要 |
2011年度に引き続き、長野県南部天竜川沿い集落の地下水を対象に、窒素安定同位体比(δ15N)、酸素安定同位体比(δ18O)、人工的不活性ガスの六フッ化イオウ(SF6)およびを溶存イオンの分析を行った。今年度追加調査したのは水道水源用井戸(4本)、家庭用井戸(6本)、神社の湧水(1本)の計11本で、硝酸態窒素濃度は2.2~25.1mgN/L、δ15Nは6.0~9.4‰ 、δ18Oは0.0~3.2‰、SF6は0.91~2.53fmol/kgであった。 窒素同位体比解析から、窒素汚染源として化学肥料由来が40~61%、堆肥由来が37~56%と推定された。酸素同位体比の値は低く、大気降下物の直接的影響はほとんどないことが確認された。SF6による年代解析では、地下水の滞留時間(2012年現在)は5~23年間と推定された。昨年度の調査結果と合わせてみると、水道水源用および調査井戸(いずれも30m以上の深井戸)の地下水の硝酸態窒素濃度は、滞留時間が20年弱(涵養年代1993~94年)で極大を示し、涵養年代の比較的新しい井戸では硝酸態窒素濃度が低かった。一方、浅井戸の多い個人井戸では、硝酸態窒素濃度と滞留時間との明瞭な関係は認められなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度の追加調査も順調に終了し、これまでに水源用井戸8本、調査井戸2本、個人井戸9本、湧水1本の計20地点の地下水について、窒素同位体比による汚染源の解析、人工的不活性ガスの一つである六フッ化イオウ(SF6)による年代解析が計画通り完了した。SF6 による地下水年代解析は、放射性水素同位体トリチウム(3H)分析による年代解析とも矛盾せず、その妥当性が裏付けられた。
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今後の研究の推進方策 |
既往の学術論文・参考書を参照して、これまでの調査結果を検討し、論文・報告書にまとめる。必要に応じて、地下水の追加調査を行う。同位体比解析と地下水年代解析を併用した解析により、今後の地下水硝酸塩汚染の動向を予測できるようにしたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
2012年度は放射性水素同位体トリチウム分析を行わなかったので、研究経費を節約できた。その残額も合わせ、2013年度の資料収集・追加調査、学会発表等に使用する予定である。
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