研究課題/領域番号 |
23510006
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研究機関 | 京都工芸繊維大学 |
研究代表者 |
山田 悦 京都工芸繊維大学, 環境科学センター, 教授 (30159214)
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研究分担者 |
布施 泰朗 京都工芸繊維大学, 環境科学センター, 教務職員 (90303932)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | フミン物質 / 藻類由来有機物 / タンパク質様蛍光物質 / 琵琶湖 / 底質 / 三次元蛍光光度法 / SDS-PAGE / 難分解性有機物 |
研究概要 |
琵琶湖など閉鎖性水域において近年微生物に分解されない難分解性の溶存有機物質(DOM)が増加しており、その原因解明が求められている、本研究では、三次元蛍光光度法(3-DEEM)とDOC測定を用いる環境水中での土壌フルボ酸(FA)、藻類由来フルボ酸様蛍光物質とタンパク質様蛍光物質の簡易計測法について検討し、琵琶湖と流入・流出河川をモデルとして、これら有機物質の動態解析を行った。河川水中DOMでは土壌FAの影響が大きく、琵琶湖水DOMは河川水と比較すると土壌FAの影響は小さく、琵琶湖内で生産される藻類由来有機物などの寄与が大きいことが明らかとなった。 三種類の湖水産植物プランクトンを培養し、その藻類由来有機物からタンパク質様蛍光物質を濃縮分離し、SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動法(SDS-PAGE)で解析することができた。タンパク質様蛍光物質は、藻類の種類により異なる分子量分布を示すことがわかった。また、Microcystis aeruginosa由来のタンパク質様蛍光物質では250 kDa以上の高分子量物質も検出され、細胞壁の構成成分である多糖類とペプチドが結合したペプチドグリカンと推測された。さらに、サイズ排除HPLC化学発光検出法によりこれらを解析し、有機態窒素の存在が確認できた。 琵琶湖底質からフミン酸 (HA)とFAを堆積層別に抽出・分離し、元素分析、NMR分析などで特性評価した。底質HAの元素組成と原子数比は、土壌HAと比較するとC含量は低く、O含量及びO/C比は高いという結果で、土壌FAと近い値を示し、土壌と比較すると脂肪族プロトンが多く、芳香族プロトンが少ないという傾向を示した。3-DEEMとSEC分析の結果は、底質HAとFAがそれぞれ土壌HAとFAと同様の蛍光特性と分子量分布を持つことを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度に計画していたことについて、おおむね順調に進展している。研究成果については、日本分析化学会など学会で発表すると共に、英文誌に2報投稿し、1報は既に受理され印刷中である。招待講演も行い、総合論文としてまとめた。
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今後の研究の推進方策 |
開発した簡易計測法を用いて琵琶湖・流域河川水中で溶存有機物質を分析し、その起源や難分解性有機物質増加の原因を解明する。湖底底質を採泥し、底質からフミン酸・フルボ酸を抽出・分離し、その特性を明らかにすると共に、底層水、湖水と底質の界面、底質中におけるフミン物質の挙動を湖水と底質中のフミン物質を分析することにより明らかにする。藻類由来有機物のみでなく琵琶湖水中のタンパク質様蛍光物質を同定するため、分離・濃縮法の検討を進める。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成23年度に藻類由来有機物からタンパク質様蛍光物質を濃縮・分離し、SDS-PAGEで同定することに成功した。しかし、琵琶湖など環境水中のこれら物質を同定するためにはさらなる分離・濃縮法が必要であり、その方法として逆浸透膜法などを検討していたが、最適な方法、装置については更なる検討が必要な上、平成23年度の残額では購入できない状況のため、繰越金額が生じた。平成24年度の請求額と繰越額約38万円を併せた額を溶存有機物質の濃縮装置購入に使用する。
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