研究課題/領域番号 |
23510006
|
研究機関 | 京都工芸繊維大学 |
研究代表者 |
山田 悦 京都工芸繊維大学, 環境科学センター, 教授 (30159214)
|
研究分担者 |
布施 泰朗 京都工芸繊維大学, 環境科学センター, 教務職員 (90303932)
|
キーワード | フミン物質 / 藻類由来有機物 / タンパク質様蛍光物質 / 琵琶湖 / 底質 / 三次元蛍光光度法 / SDS-PAGE / 難分解性有機物 |
研究概要 |
琵琶湖など閉鎖性水域では近年微生物に分解されない難分解性の溶存有機物質(DOM)が増加しており、その原因解明が求められている。本研究では、三次元蛍光光度法(3-DEEM)とDOC測定を用いる環境水中での土壌フルボ酸(FA)、藻類由来フルボ酸様蛍光物質とタンパク質様蛍光物質の簡易計測法について検討した。琵琶湖と流入・流出河川をモデルとして、これら有機物質の動態解析を行い、河川水中DOMは土壌FAの影響が大きく、琵琶湖水中DOMは河川水と比較すると土壌FAの影響は小さく、内部生産の藻類由来有機物の寄与が大きいことを明らかにした。 三種類の湖水産藻類を培養し、藻類由来有機物からタンパク質様蛍光物質を濃縮分離し、SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動法(SDS-PAGE)で解析した。タンパク質様蛍光物質は、藻類の種類により異なる分子量分布を示し、Microcystis aeruginosa由来のタンパク質様蛍光物質では250 kDa以上の高分子量物質も検出され、細胞壁の構成成分であるペプチドグリカンと推測された。琵琶湖水中DOMを凍結乾燥などで濃縮後、タンパク質様蛍光物質を濃縮分離し、SDS-PAGEを行ったところ、微量のタンパク質が検出されたため、逆浸透膜を用いた装置を作製し、濃縮法の検討を行っている。 2010~2012年の各11月に採取した琵琶湖底質からフミン酸 (HA)とFAを堆積層別に抽出・分離し、元素分析、NMR分析などで特性評価した。底質HAの元素組成と原子数比は、土壌HAと比較するとC含量は低く、O含量及びO/C比は高いという土壌FAと近い値を示し、脂肪族プロトンが多く、芳香族プロトンが少ないという傾向を示した。3-DEEMとSEC分析の結果は、底質HAとFAがそれぞれ土壌HAとFAと同様の蛍光特性と分子量分布を持つことを示した。底質中の元素分析も層ごとに行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23、24年度の計画していたことについて、おおむね順調に進展し、学会で発表すると共に英文誌2報、和文誌に2報が掲載された。
|
今後の研究の推進方策 |
開発した簡易計測法を用いて琵琶湖・流域河川水中で溶存有機物質を分析し、その起源や難分解性有機物質増加の原因を解明する。底質からのフミン物質などの溶出の解析、琵琶湖などでのタンパク質様蛍光物質の同定のための濃縮法の検討をさらに進める。
|
次年度の研究費の使用計画 |
藻類由来有機物からタンパク質様蛍光物質を濃縮・分離し、SDS-PAGEで同定することに成功した。琵琶湖など環境水中のこれら物質を同定するため濃縮法として、逆浸透膜法を用いる装置を作製したので、この装置を用いて琵琶湖水中のDOM及びタンパク質様蛍光物質を濃縮分離し、SDS-PAGEで同定する。底質からのフミン物質の溶出機構の解析、重金属の吸着、溶出の機構を解析する。
|