研究課題/領域番号 |
23510007
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研究機関 | 和歌山大学 |
研究代表者 |
井伊 博行 和歌山大学, システム工学部, 教授 (60283959)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | トンネル湧水 / トンネル排水量 / 有効間隙率 |
研究概要 |
2011年7月と8月に松本トンネルの湧水およびトンネル周辺の河川水、湧水(簡易水道水源)、池水の現地での水質測定、流量測定を行った。また、採水した水の酸素、水素同位体比を水と水素ガス、二酸化炭素との平衡法で処理行った後に、質量分析装置で分析した。また、溶存イオンをイオンクロマトグラフィで分析した。また、松本トンネル事務所では、トンネル湧水量を常時測定しており、事務所から流量データを入手した。これらの結果を基に、日本地下水学会の年回で、成果の中間発表を行った。トンネル掘削開始(1990年10月)から、2012年3月までに983万トンの水が排出された。トンネル湧水のトリチウム濃度は常に低く、長期間岩盤に貯留された水であると考えられる。983万トンは非常に多い水量であるが、岩盤の有効間隙率を試試体から求められた10%と仮定すると、岩盤のい水の20%しか排出されていないことになり、トリチウムの結果から推定される長期間岩盤に貯まった水が排出されていることと一致する。トンネル上部にある岩盤地下水が入れ替わるためには、20年で20%の貯留水が排出されていることから、さらに80年以上の年月が必要であることが判った。また、トンネル掘削時に周辺の湧水や井戸の水枯れが生じた。20年以上も経ても、水枯れの起きた湧水、井戸、トンネルから離れており、トンネルレベルよりも低い湧水は変化が起きていない。しかし、トンネルから湧水量は、掘削時に一時的に多量出水したが、貫通後は毎分1トンの水量であったが、2011年では、毎分0.6から0.7トンまで低下している。その水量低下で、一部の湧水の回復が見られた。2005年に確認。ただし、今回の調査では、その湧水地点の水源のタンクに送水設備が設置されており、トンネル湧水を水枯れ地域に送水しているので、湧水地点の水は送水された水の可能性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
松本トンネルでの排水された水の解析は順調に進んでおり、今後は、トリチウム分析を行い、周辺の水のトリチウム濃度把握して、トンネル湧水の年代の変化を調べる予定である。今後は、松本トンネルの成果を他の場所でも展開させることで、他の地域の調査が遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
松本トンネルでの排水メカニズムを他の場所でも確認することが必要で、当初は、掘削が終わりすでに供用されている、かつて調査した蘇武トンネルを考えていたが、データをとっても新しく得るものが少ないので、新規の掘削開始するトンネルの調査が可能なので、そちらでの調査を開始する。紀伊半島南部の2.6から2.8kmの道路トンネルである。現在、交渉中である。
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次年度の研究費の使用計画 |
前年度は、研究地域での調査は行ったが、トリチウム分析など費用のかかる外注分析は、調査結果をみてから判断することにしたため、かなりの予算持ち越した。今年は、昨年持ち越した外注分析を行う予定である。松本トンネルの成果を、国際会議で2回発表する予定(IGC オーストラリア、IAH カナダ)である。また、新規掘削するトンネルでのトンネル湧水、周辺河川水の採水、分析を行う。また、河川水、トンネル湧水の流量測定を行う。
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