研究課題
本年度は、本課題の2つ目の課題であるSwiss FACE土壌(スイスの草地土壌においてマメ科あるいは非マメ科草種を栽培し、重炭素ラベル二酸化炭素および2水準の重窒素肥料を10年間連続施用した土壌)中の腐植物質、特にフェノール酸の分画を行い、最終的にGC-IRMS分析を行い、各フェノール酸の13C同位体濃度を測定することができた。フェノール酸については、エステル結合、エーテル結合、水抽出、EDTA抽出の4種類の抽出法を用いて、特性の異なるフェノール酸の抽出を行った。サンプル調製やガスクロマトグラフィーの測定条件の検討に非常な時間を要したが、最終的に存在が予想される主要フェノール酸物質を精度高く測定することができた。しかしながら水抽出については、色々試みたがフェノール酸ピークを確認することができず、草地土壌である本サンプルではごく微量しか含まれないことが明らかとなった。GC-IRMSによる分析からは非常に多くの数値データが得られたため、今後これらのデータからデータマイニングする必要がある。また次年度、システムダイナミクス理論による炭素動態解析を行うための基礎データを揃えることができた。初年度に行った実験のまとめは、カリフォルニア大学デービス校のVan Kessel教授らと連絡をとりながら行っており、Soil Biology and Biochemistryに投稿することが決定し、近く投稿する予定である。
2: おおむね順調に進展している
当初の予定通りに1年目はSwiss FACE土壌の易分解性有機物質の分画が完了し、2年目に当たる今年もフェノール酸分析とGC-IRMSによる13C測定が完了し、実験が予定通り推進された。しかしながら、GC-IRMS分析では非常に多くの数値データが得られたため、データマイニングは次年度に持ち越された。
今年度までに、必要となる基本データは全て測定することができたので、今後はこれらのデータを用いたデータマイニングを行うとともに、システムダイナミクス理論を元にしたモデリングを行い、炭素・窒素の回転率など詳細な動態解明を行う。また、関係する分野の学会に出席して、最新研究について知見を深めると共に、学術雑誌に投稿を行う。さらに、土壌中の炭素や窒素動態に大きく影響を与える土壌微生物の機能について検証を深めるために微生物学的な補足検証を行う。
次年度は、最終年度であるため、データのとりまとめが主体となる。システムダイナミクス解析のためのソフトウェアを購入すると共に、最新研究情報収集のための旅費、学術論文執筆のための論文添削費や掲載料に支出する。さらに、本研究課題においては土壌微生物機能が重要であることが明らかになってきており、本課題の考察を深めるために補足実験を行うので、関係する機材や消耗品を購入する予定である。
すべて 2013 2012
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (16件)
J. Japan. Soc. Hort. Sci.
巻: 82 ページ: 30-38
Journal of Organic Systems
巻: 8 ページ: in press
日本作物学会紀事
巻: 82 ページ: 印刷中
Asian J. Earth Sci.
巻: 5 ページ: 63-69
10.3923/ajes