研究課題/領域番号 |
23510010
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研究機関 | 滋賀県立大学 |
研究代表者 |
丸尾 雅啓 滋賀県立大学, 環境科学部, 准教授 (80275156)
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キーワード | 環境質定量化・予測 / 微量元素 / 有機配位子 / 琵琶湖 / 化学スペシエーション |
研究概要 |
本研究では、琵琶湖水中において、琵琶湖における調査を継続し、琵琶湖水中において生体必須元素である鉄・銅の配位子として作用し、両金属の動態に影響する溶存有機物群の性状を明らかにすることを目的としている。 昨年度はPesudopolarographyの測定結果に基づいて、琵琶湖水等の天然湖沼水に含まれる高安定度の銅錯体の存在について、2012年10月に行われたISRLE(湖沼河川環境国際シンポジウム、張家界、中国)にて発表を行った。 また、琵琶湖における定期的採水を継続し、指導大学院学生とともに、琵琶湖と集水域の水に含まれるDOMの相互作用について研究を行い、起源の違いによる化学組成、錯生成に関わる構造の違いについて研究を行い、成果を2012年7月に行われたASLO Summer Meeting (大津市)において大学院生が発表を行った。 鉄(II)の安定化に寄与する配位子の存在が、分光光度法と化学発光法の測定値が大きく異なることから予想された。成果を2012年7月に行われたASLO Summer Meeting (大津市)において代表者が発表した。さらに学部学生とともに琵琶湖水における鉄(II)の安定化に寄与する有機配位子の存在について分光光度法と競争配位子法を用いて研究を行い、鉄(II)の溶存態のほとんどが、錯体として琵琶湖水中に溶損している可能性を示した。この成果については一部日本陸水学会近畿支部研究発表会にて発表した。 また2011年度の成果に基づいて染料(コンゴレッド)とDOMの相互作用(錯生成)について指導大学院生が研究を行い、ナフトール系化合物と同様に、特に下水処理水との相互作用が琵琶湖水と異なることを見いだしたので、2012年6月に開かれた第6回環境化学・環境毒性学国際会議(ヒューストン、テキサス、USA)にて発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究ではより選択的、特異的に両金属と結合する有機配位子の検出を試みることを目的としている。当初目指していた電気化学測定法は装置の不調により進行が遅れている一方で、競争配位子-分光光度法による鉄(II)の配位子検出法により、比較的高安定度な錯体の分析が可能となったため、研究の遂行は十分可能となった。この結果、鉄(II)の好気的環境中での安定化が、錯生成によるものである可能性を示すことができた。 また銅(II)についても、同様の分光光度法が適用できる可能性が高いので分析法を早々に確立し、適用する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
琵琶湖における採水を継続する。昨年度は季節ごとの採水を行ったが、より明確な季節的変化を検出するため、特に4-11月までの毎月の採水を行う予定である。採水層についても、生物活動による配位子生産を確認するため、クロロフィル極大、水温薬草を中心に、0.5-2mおきの採水をポンプで行い、より正確な関連づけを行う予定である。 配位子の定量化は、主として分光光度法-競争配位子で行う予定である。 また、生物由来配位子の化学的安定性を調べるため、試水の計時変化を調査、光分解性を調査する予定であり、比較湖沼での実験採水も行う。また、同様の化学組成を持つ中栄養湖、富栄養湖のうち有機物組成が異なる湖沼で採水を行い、配位子の濃度、キャラクタリゼーションを行う予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
琵琶湖における採水、分析密度を上げるために必要な試薬、器具を購入する。 SIL2013(ハンガリー)、日本陸水学会(龍谷大学、大津)等での成果発表、また富栄養湖として印旛沼、中栄養湖であり、光の影響を受けやすいと考えられ、かつ有機物の多くが大気由来である池田湖を比較対象として採水、調査を行うために旅費を使用する。 試料採取、現場での調査・実験補助のために、謝金、賃金を使用する。また現場でのレンタカー借り上げ、船の借り上げ、燃料費、分析機器の修理依頼のため、その他経費を使用予定である。
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