研究課題/領域番号 |
23510014
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研究機関 | 東京都市大学 |
研究代表者 |
本多 照幸 東京都市大学, 工学部, 教授 (30139414)
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キーワード | 深地層環境 / 核種移行 / ナチュラルアナログ / 高レベル放射性廃棄物 / 地層処分 / マイナーアクチノイド / 逐次抽出法 / 室内通水実験 |
研究概要 |
地層処分では長期間にわたり安全性を確保した上で、かつ人間の管理を必要としないが、安全性を追求する上でいくつかの問題点が挙げられる。深地層では、一般的に地下水の移動速度は遅いとされているが、実際の天然の地層中には割れ目や断層といった地下水が流れやすく移動速度が速くなる箇所が存在する。そのため、この割れ目や断層を考慮した場合、地下水の移動速度が速くなり、放射性核種が想定していた時間よりも早く生活環境圏に浸出してしまうことが懸念される(地下水シナリオ)。また、割れ目や断層がある箇所では変質を伴っており、この変質の存在が放射性核種の地層中での挙動を変化させる可能性があり、地層処分の安全評価をするために、本研究(平成24年度)では北海道幌延海成層群の堆積岩を対象として、深地層(深度140m調査坑道)中でのマイナーアクチノイドの挙動と支配要因を評価するために、ランタノイド(Ln、ナチュラルアナログ元素)、U、Thを用いる評価手法の確立を目的とした。 その結果、次の重要な知見を得た。①ナチュラルアナログ元素、Th及びUの収着は、酸化物と硫化物・有機物が支配的であった。②分配係数Kdが軽Ln(最大)で0.97、重Ln(最小)0.81となり、全体的には軽Lnに富む傾向となった。③酸化物の代表である酸化鉄の初期形態である水酸化鉄は、共沈作用によって重Lnに比べて軽Lnをより多く取り込む性質が見られた。④それとは反対に、硫化物や有機物では軽Lnよりも重Lnの方を多く取り込む傾向が見られた。⑤室内通水実験(短時間の反応)での収着は、天然の岩石に含まれるナチュラルアナログ元素の化学形態とは異なる化学形態をとる可能性が示された。⑥ベントナイトに含まれるナチュラルアナログ元素、Th及びUは、珪酸塩鉱物に次いで硫化物・有機物を主な化学形態として存在していることが判明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成24年度では、北海道幌延海成層群に産する堆積岩を用いて、自然環境で起こっている元素(核種)の移行・固定メカニズムとその地球化学的条件の解明について、以下の極めて重要な知見を得ることができた。 本研究の実験条件下で高レベル放射性廃棄物(HLW)から放射性核種が溶出した際には、まず人工バリアであるベントナイト中の黄鉄鉱等が重Lnと挙動の類似するネプツニウム(Np)を収着し、次に天然バリアである岩石では軽Lnと挙動が類似するアメリシウム(Am)やキュリウム(Cm)などが水酸化鉄等の水酸化物と共沈し、やがて酸化物となってその場に固定され、また、Npは黄鉄鉱等の硫化物や腐植物質等の有機物に収着し、固定される可能性が高いことが判明した。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度(最終年度)では、本研究で新たに原位置試験に関わる室内通水実験試料(岩石、地下水等)の採取並びに基礎データ(地下水のpH、酸素濃度等)の取得、及びそれら試料中の微量元素(ナチュラルアナログ元素)の分析を実施する。さらに、土岐花崗岩及び幌延海成層群堆積岩における断層部並びに変質部から採取した試料を用意する。なお、岩石試料には一部逐次抽出法も適用し、鉱物分離した試料を準備する。これら試料の分析法は、基本的には前述の岩石試料と同様であり、得られた結果を用いて岩石-コロイド-地下水系における元素並びに核種の分配、岩石の収着・保持機構、とりわけ断層部や変質部におけるナチュラルアナログ元素の収着・保持機構等について詳細に考察し、研究の総括を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度では、直接経費(申請額900,000円)を予定通り執行し、計画通り研究を進める予定である。
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